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72 新たな場所、新たな光
キャーキャーと、楽しそうにはしゃぎ回る子どもたちの声が響く園庭。その中に、葵の姿があった。夕暮れ時、保護者の迎えを待つ園児たちに、葵は優しく声をかけている。
「葵先生、バイバーイ!」ある子が、満面の笑みで手を振った。
「はい、バイバイ、気をつけて帰ってね。また明日ね」
葵は、穏やかな笑顔で応えた。その声には、以前のような悲しみや絶望の影はなかった。
修一の死というあまりに重い悲劇、そして幸樹との因縁を知って以来、葵は深く傷つき、閉ざされた日々を送っていた。しかし、修一が最後に遺した「葵には幸せになってほしい」という願いが、彼女を再び立ち上がらせた。自己を責め続けるのではなく、彼の思いに応えること。それが、葵が出した答えだった。
そして今、葵は保育園の事務員として働き始めていた。子どもたちから見れば、立派な「事務の先生」だ。デスクワークをこなしながらも、園児たちの健やかな成長を間近で見守る日々。最近は、この子たちとの他愛もない会話の中に、ささやかな、しかし確かな幸せを見出すようになっている。彼らの純粋な笑顔、小さな手で差し出される落書き、そして、無邪気な質問。そうした一つ一つが、葵の心をゆっくりと癒やし、未来へと向かう力を与えてくれていた。




