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70 微笑み

 修一は、自らが選んだ道の終焉を静かに受け入れていた。愛する者を守れなかったという無力感と自己嫌悪が、彼の心を深く支配していた。もう、これ以上、誰かを傷つけることも、守りきれない自分に絶望することもない。そう、信じていた。


 しかし、本当に命が尽きる直前、修一は薄れゆく意識の中で、温かい光に包まれるのを感じた。それは、夢だったのかもしれない。そこに、彼がずっと守りたかった、しかし守りきれなかった最初の恋人、月美が立っていた。彼女は、かつてのように朗らかに、そして慈愛に満ちた眼差しで修一を見つめ、微笑んでいた。

 「修ちゃん…」


 月美の声が、まるで遠い記憶の歌のように、修一の耳に届く。その声は、かつての痛みを伴うものではなく、ただただ安らぎに満ちていた。そして、彼女は優しく、しかしはっきりと、修一に語りかける。

 「修ちゃんは、葵さんをちゃんと守ったんだよ」


 その言葉が、修一の心を深く、そして温かく包み込んだ。自分の守り方は間違っていたのではないか、自分は愛する者を不幸にするだけなのではないか、という絶望。その全てが、月美の優しい言葉によって、洗い流されていくかのようだった。


 修一の表情に、安堵したような、そして微かに微笑んだような色が現れた。彼は、その顔のまま、静かに、そして穏やかに旅立った。

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