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67 無言の支え
葵の嗚咽が部屋に響き渡り、床を浸していく。その姿を前にして、希穂はただ、呆然と立ち尽くしていた。かけるべき言葉が見つからない。どんな慰めの言葉も、今の葵にとってはあまりにも軽く、上滑りしてしまうように思えた。
『どうしてあげればいいの…』
希穂の心もまた、深い苦悩に苛まれていた。修一の死。そして、その裏に隠された、自分が引き合わせてしまった幸樹との因縁。すべてが、葵をこれほどまでに追い詰めてしまった原因の一端が自分にあるという事実に、希穂はただただ打ちのめされていた。
声をかけることさえ、今の葵には重荷になるのではないか。そんな思いが、希穂の口を閉ざした。できることといえば、ただ葵の傍らにそっと座り、彼女の肩を抱き、無言で寄り添うことだけだった。
葵の背中を、優しく、しかし確かな力でさする。その温もりが、わずかでも葵の苦しみを和らげられるようにと、希穂は心の中で必死に願っていた。涙と後悔に打ちひしがれる葵と、何もできない無力感に苛まれる希穂。二人の間に、ただ重い沈黙と、深い悲しみだけが満ちていた。




