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64 崩れゆく愛

 修一の死というあまりにも重い現実が、葵の心を打ち砕いた。その衝撃は、葵と幸樹の間に芽生え始めていた愛情を、一瞬にして凍てつかせ、そして一気に崩れ去らせ始めた。


 幸樹と共にいる時の高揚感、社会と再び繋がると感じた刺激。それらは確かに、傷ついた葵の心を新たな方向へと誘った。しかし、修一が命を絶ったという事実は、彼が葵に注いでいた深い愛の真の破壊力を、遅れて、しかし圧倒的なまでに葵に突きつけたのだ。

 『修一さんは、私をほんとうに心から愛してくれていた…』


 彼が別れを受け入れた時の、あの微かな寂しさ。それは、葵を繋ぎ止めようとせず、自身の感情を押し殺してまで、葵の幸せを願ったがゆえの、深い悲しみと絶望だったのだ。言葉にせずとも伝わっていた彼の無償の愛が、今、修一の死という形で、葵の心のすべてを凌駕してしまった。


 幸樹への愛情は、もはや遠い幻のように感じられる。彼の存在が修一の死に繋がったという、拭い去れない因縁が、葵の心を苛む。そして何よりも、修一が自ら命を絶つほどに、自分を愛してくれていたという事実が、葵の胸に重くのしかかる。


 葵の心は、修一への深い後悔と、彼が遺したあまりにも大きな愛の重みで飽和していた。

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