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63 襲いかかる絶望

 希穂からの電話を切った後、葵は床に崩れ落ちたまま、動くことができなかった。修一の死。その言葉が、彼女の脳内で何度も、何度も、途方もない衝撃となって響き渡る。

 「修一さん…どうして…?」


 その声は、掠れて、ほとんど息に近かった。しかし、心の奥底では、魂が引き裂かれるような慟哭がこだましていた。葵の心を襲ったのは、あまりにも複雑で、深く、そして耐え難い感情の奔流だった。


 絶望:ようやく立ち直りかけたばかりの心が、再び奈落の底へと突き落とされた。自分を救ってくれた光が、永遠に失われてしまったという、筆舌に尽くしがたい喪失感。


 後悔:なぜ、もっと早く気づかなかったのか。なぜ、彼の寂しそうな表情の真意を読み取れなかったのか。彼の優しい受け入れが、実は絶望の証だったと、今になってようやく理解した。あの時、自分が彼を突き放さなければ、こんなことにはならなかったのではないか。


 罪悪感:自分が彼を裏切ったからだ。自分自身の身勝手な感情に流され、彼を捨てたからだ。葵の心には、修一を死に追いやったのは自分だという、恐ろしいほどの罪悪感がのしかかった。


 錯乱:幸樹の存在。修一の死。そして、その二人の間にあった、知らなかった因縁。全てが絡み合い、頭の中は完全に混乱していた。なぜ、こんな恐ろしい運命が自分に降りかかるのか。


 怒り:そして、その混乱の奥底には、修一の死の原因となったかもしれない幸樹への、激しい怒りが芽生え始めていた。


 葵の目からは、もう涙さえ出なかった。ただ、全身の力が抜け落ち、意識だけがその場を漂っているかのようだった。修一の死は、彼女にとって、これまでの人生で経験したどんな苦痛よりも深く、重いものとして、その心に刻み込まれていった。

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