62 悲報
希穂からの連絡を待つ間の一分は、一時間にも、いや、永遠にも感じられた。テレビのニュースが告げた不穏な影が、葵の心を容赦なく締め付ける。まさか、そんなはずはないと否定する理性と、拭いきれない胸騒ぎが激しくせめぎ合っていた。
二時間ほど経っただろうか。待ち焦がれたスマートフォンの着信音に、葵は飛びつくように電話に出た。
「もしもし、希穂ちゃん…?」
受話器の向こうから聞こえてきた希穂の声は、悲痛なほどに涙声だった。その声が、最悪の予感を確信へと変える。希穂は、申し訳なさそうに、途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「葵ちゃん…残念ながら、当たってたよ…」
葵の心臓が、一度大きく跳ね、その後、氷のように冷え固まっていくのを感じた。
「自死だって…遺書みたいなものもあったって…」
希穂の言葉が、ゆっくりと、しかし確実に葵の意識に沈んでいく。修一が死んだ。自ら命を絶ったのだ。
その瞬間、葵は、別れを告げたあの時、修一の顔に浮かんだ微かな寂しさの本当の意味を、改めて理解した。それは、ただの別れによる悲しみではなかった。もっと深く、もっと絶望的な、未来への諦めが込められた表情だったことを。
そしてまた、脳裏には幸樹の言葉が、皮肉なまでに鮮明に蘇る。「若い頃に色々な人に迷惑をかけたことがあって…」。その言葉が、修一の死と、そして幸樹の存在と、冷酷なまでに結びつく。
葵は、その場に崩れ落ちた。後悔と絶望が、彼女の全身を支配する。修一の死。そして、その死の裏に隠された、あまりにも深い因果。葵の目から、とめどなく涙があふれ出した。




