58 交差する過去
修一との涙の別れ以後、葵と幸樹の交際は順調に進んでいた。そしてある日、葵は同僚である希穂に、幸樹からプロポーズを受けたことを打ち明けていた。希穂は葵の幸せを心から願っていたが、その時、幸樹の名前を知って、胸の奥に拭えない違和感がよぎった。
『どこかで、その名前を見たような…』
以前、修一の過去を調べる中で目にした資料の隅に、確かその名があったような気がしたのだ。嫌な予感に駆られながらも、希穂は再び過去の報道資料やデータベースを丹念に調べ始めた。そして、彼女の予感は、最悪の形で現実となる。
『遠山幸樹!?』
彼こそ、修一の元恋人である月美を死に追いやり、その結果修一が傷害事件を起こした相手だという、紛れもない事実がそこにあったのだ。
その瞬間、希穂の心臓は凍り付いた。自分が間接的に、葵とあの男を結びつけてしまったのではないか。ようやく修一という理解者を得て、心の安らぎを見つけた葵が、今度はその因縁の相手と深く関わろうとしている。
「私って、葵ちゃんに災いをもたらす存在なんだわ…」
希穂は、自らの手で、最も大切な友人である葵に、再び深い苦痛を与えるきっかけを作ってしまったことに、計り知れない苦悩を感じていた。震える手で葵に電話をかけ、この恐ろしい真実を伝えるしかなかった。その声は、絶望と罪悪感でかき消えそうだった。




