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52 惹かれ合う心
葵が障がい者施設を訪れるたび、幸樹は彼女が自分の話を真剣に、そして興味深く聞いているかに気づいていた。彼の言葉の端々を熱心に拾い上げ、時には深く頷き、時には鋭い質問を投げかける葵の姿に、幸樹は少しずつ特別な感情を抱き始めていた。
「こんな風に話を聞いてもらえて、嬉しいです」
ある日、施設の閉館間際、幸樹はぽつりと葵に語りかけた。
「たいていの人は、こういった話をしても聞き流す感じなので…」
彼の言葉には、偽りのない感謝と、葵に対する特別な思いが滲んでいた。それは、彼の人生において、これほどまでに心を開いて話せる相手が、いなかったことの表れでもあった。葵の美しさだけでなく、彼女の内面にある共感力と知性に、幸樹は強く惹かれていた。
その後、しばらくして、幸樹は意を決して葵を誘った。
「今度、もっとゆっくりとお話しさせてもらえませんか?」
それは、障がい者支援という共通の話題を超え、二人の関係をさらに深めたいという、幸樹の率直な願いが込められた誘いだった。




