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49 眠れる情熱の覚醒
幸樹との会話は、修一が葵を優しく包み込むような温かさとは異なっていた。彼の言葉は、まるで彼女の内に深く眠っていた「何か」を目覚めさせるように、直接心に語りかけてくる。特に葵の胸を打ったのは、彼が支援している障がいを持つ子どもたちの話だった。
「彼ら、社会の不条理や困難に真正面から向き合っている姿を見ていると、何か力になりたい、僕でもできることがあるんじゃないかって、痛感するんです」
幸樹の言葉は、偽りなく、深く、そして力強かった。その言葉は、アナウンサーとして社会の不条理を伝え、人々を勇気づけ、より良い社会の実現に貢献したいと願っていた、かつての葵の情熱を鮮明に思い起こさせた。あの事件以来、自分の傷ばかりに囚われ、社会から距離を置いていた葵にとって、幸樹が語る子どもたちの姿は、深い共感を呼ぶものだった。
彼の言葉は、凍りついていたはずの葵の心の奥底に、まるで強烈な一撃を与えたかのようだった。それは、修一の穏やかさで包み込まれることで癒えていく痛みとは違う、もっと生々しい、しかし同時に魂を揺さぶるような感情だった。幸樹は、葵の内にくすぶっていた、「社会に対する問題意識や、誰かのために行動したい」という純粋な欲求に触れてきたのだ。




