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48 穏やかな仮面の下で

 『…遠山幸樹』


 その名を葵の口から聞いた瞬間から、修一の思考は途方もない速度で駆け巡っていた。

  「月美を自死に追い込んだ男」

 あの憎悪の対象が、まさかこんな形で、再び自分の前に現れるとは。

 『絶対に許せない』

 深く心の奥底に沈めていたはずの、あの男への激しい怒りが一気に噴出した。


 『また俺の前に?』 『何の因果だ?』

 なぜ今、このタイミングで、彼が葵の前に現れたのか。まるで運命の悪戯かのように、二人の間を繋ぐ鎖の存在に、修一は戦慄した。


 そして、葵の口から語られた「償い」「生きがい」という幸樹の言葉が、修一の心をさらに抉った。

 『障がい者支援のボランティア?』 『贖罪のつもりなのか?』


  その言葉の裏に、あの男の偽善や、過去を帳消しにしようとする魂胆が見え隠れするように感じられ、修一の怒りは増幅した。

 『月美…俺はどうすれば…』


  愛する人を守れなかったという無力感と後悔が、再び修一を苛む。あの時の自分の行動は、本当に正しかったのか。月美の死の痛みが、再び鮮やかに蘇る。


 次から次へと、抑えきれない感情が修一の心臓を強く打ちつけた。表面上は穏やかさを取り繕いながらも、彼の内側では、激しい怒り、憎悪、困惑、そして深い悲しみが複雑に混じり合い、嵐のように渦巻いていた。葵の無邪気な笑顔が、その嵐をさらに強める燃料となる。彼は、このまま過去の影が葵に忍び寄ることを、何よりも恐れていた。



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