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43 新たな気づき

 川島秀明との見合いは、葵の「時間稼ぎ作戦」が、ひとまずの成功を収めた。家族への義理は立てられた。秀明という人物に問題はなく、むしろ非の打ち所がないほどだったが、葵が「過去に縛られて前向きになれない」と正直に打ち明けたことで、家族もそれ以上、関係の進展を強いることはしなかった。愛する娘が再び心を閉ざすことだけは避けたい。その思いが、家族に葵の気持ちを受け入れさせたのだ。


 これにより、葵と修一の関係を巡る家族からの圧力は、一時的にではあるが解消された。二人の間には、再び穏やかな日々が流れ始める。公園での散歩、他愛もない会話、そして時には訪れる深い沈黙。修一の包み込むような優しさは、依然として葵の心を癒やす一番の薬だった。


 修一との穏やかな日々が続く中、葵は週に一度、カウンセラーと共に障がい者施設を訪れるようになっていた。これは、彼女のリハビリの一環として勧められたものだった。


 最初は、ただ時間をつぶすような気持ちだったかもしれない。しかし、施設に足を踏み入れるたびに、葵の心は静かに、しかし確実に揺さぶられていった。


 そこで目にするのは、不自由な体にもかかわらず、様々なことに一生懸命に取り組む障がい者たちの姿だった。絵を描く者、楽器を奏でる者、あるいは小さな手作業に集中する者たち。彼らの表情は真剣で、瞳にはそれぞれの目標に向かう強い意志が宿っていた。失敗しても、何度でもやり直し、互いに助け合い、できた時には心からの喜びを分かち合う。

 『この人達も、一生懸命頑張っている』


 葵は、その姿に、思わず息を呑んだ。

 『私なんかより、ずっと、より厳しい状況で…』


 彼らが抱える困難は、想像を絶するものだろう。それでも、彼らは与えられた環境の中で、精一杯、自分たちの人生を生きている。その純粋な努力と、困難に立ち向かう強さが、葵の心の奥深くに響いた。


 彼らの姿は、葵に大きな勇気を与えてくれた。自分の過去の傷ばかりに囚われていた自分。失われたものばかり数えていた自分。彼らの生き様は、そんな葵の心を強く揺さぶり、もっと前向きに、もっと建設的に生きることの意味を教えてくれているようだった。


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