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42 優しさの裏側
見合いを終えたその日のうちに、葵は修一に電話をかけ、川島秀明とのお見合いについて報告した。
修一は、葵の言葉を、ただひたすらに優しく頷きながら聞いていた。彼の声はいつも通り穏やかで、葵の報告を静かに受け止めてくれていることが伝わってくる。その理解の深さに、葵は安堵を覚えた。しかし、電話を切った後、葵の心には、これまでとは違う、わずかな引っ掛かりが残った。あるいは、物足りなさと表現するべきか。
『自分から「今日はどうだった?」って、聞かないのね…』
『もう少しくらい、妬いてくれてもいいのに…』
心の中で、そんな子どもじみた思いがふと浮かび上がる。他の男性と会ってきたというのに、修一は驚くほど冷静だった。嫉妬心の一つも示さない彼に、葵は拍子抜けしたような、少し寂しいような気持ちになった。
『まぁ、私を信用してくれているってことなんだろうけど…』
そう結論づけてみたものの、完全には納得できない自分がいた。彼の揺るぎない優しさは、確かに葵の心を癒やし、支えてくれている。だが、その優しさは時に、葵の心の中にある、もっと複雑な感情、例えば「愛されている」という確証を求める気持ちには、届かないことがあるのかもしれない。




