41 結果報告
お見合いが終わったその日のうちに、葵は家族にその結果を打ち明けた。重い空気が流れるリビングで、葵は正直な気持ちを伝えた。
「川島さん、すごく素敵な人だった…」
葵の言葉に、家族の顔にわずかな期待の色が浮かぶ。しかし、その後に続いた言葉に、その期待はゆっくりと、そして確実にしぼんでいった。
「でも…どうしても、前向きになれないの。彼は私の過去を知っている。そう思うと、どんなに優しくされても、その気遣いが『私の過去を知っているからだ』って、考えてしまうの。あの忌まわしい過去に、まだ縛られているみたいで…」
葵の瞳には、再び悲しみが宿っていた。秀明という個人の問題ではなく、自身のトラウマが、新しい関係を築くことを阻んでいる。その現実を、葵は痛感していた。
家族は、葵の言葉に深く沈黙した。娘が、目の前の「優良物件」に心が動かないのは、修一の存在だけでなく、過去の影がまだ色濃く残っているからだ。彼らは、葵をあの絶望の淵から救い出し、心から幸せになってほしいと願っている。そのためには、彼女が過去の呪縛から完全に解き放たれることが何よりも重要だと理解していた。
秀明との縁談は、家族が葵の未来のために見出した、希望の一つだった。だが、葵の言葉を聞けば、それが今の彼女には重荷でしかないことも明らかだった。残念な思いはあった。しかし、愛する娘を、あの忌まわしい過去から完全に救い出さなければならない。その一心で、家族は葵の言葉を受け入れるしかなかった。
「…そうか。無理することはない。葵の気持ちが一番大切だから」
父親が静かにそう言った。母親も、ただ頷き、葵の手をそっと握った。再び、家族の間には複雑な感情が渦巻いたが、葵の幸せを願う気持ちに変わりはなかった。




