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37 緊急避難

 葵は内心、ひどく気乗りがしなかった。修一との穏やかな絆が深まっている今、他の男性と会うことなど、考えられない。しかし、父親の真剣な眼差し、母親の心配そうな表情、そして兄の口には出さない圧力を前にして、葵は強く拒むことができなかった。


 これ以上家族を刺激したくない。ようやく回復の兆しを見せ始めた自分の心を、彼らは誰よりも案じている。その思いを裏切ることは、今の葵にはできなかった。

 「…わかりました。一度、お会いしてみます」


 絞り出した声は、自分でも驚くほど小さかった。だが、その言葉に、家族の顔に安堵の色が広がるのを見て、葵は胸の奥で複雑な痛みを覚えた。

 『とりあえずは時間を稼ぐしかない… 今はそれしか…』


 緊急避難的に家族の案を受け入れた葵の心には、諦めにも似た気持ちが支配していた。この出会いが、果たして彼女の心をどう動かすのか。それとも、さらに状況を複雑にするだけなのか。葵は、まだ見ぬ未来を前に、深く息を吐いた。



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