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36 焦燥

 葵の心は、家族への感謝と修一への愛情の間で激しく揺れ動いていた。家族の反対は正しかった。彼らが自分をどれほど大切に思っているか、葵は痛いほど理解していたからだ。しかし、修一の存在もまた、今の葵にとってかけがえのない光だった。


 そんな葵の葛藤を、家族は静かに見守っていた。だが、日が経っても、葵が修一と別れる気配はない。このままでは娘がまた深く傷ついてしまうのではないか、と彼らは内心焦り始めていた。そして、父親がある行動に出た。

 「葵、一度会ってみないか。お父さんの会社で、優秀な若いのがいるんだ」


 葵の父親が勤務する大手一流企業に勤める、将来を嘱望される若手社員の一人だという。名前は川島秀明というらしい。父親が自ら白羽の矢を立てた人物であることから、その人柄や能力は折り紙つきなのだろう。


 突然の申し出に、葵は戸惑いを隠せない。修一との関係を続けたいと願う一方で、家族の思いを無下にはできない。新たな出会いが、葵の心をさらに複雑なものにすることになる。



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