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32 言葉にならなかった真実
修一の告白を聞きながら、葵は、あの日のことを思い出していた。自分の過去を打ち明け、涙が止まらなくなった時、修一が何かを言いかけ、そして、結局何も言わずにただ優しく抱きしめてくれた、あの日。
「ひょっとしてあの時…?」
その問いは、葵の心に、新たな痛みを伴いながらも、どこか深く納得させるものを残した。あの時の修一の顔に浮かんだ、一瞬の迷い。それは、まさにこの、壮絶な過去を打ち明けるべきか否かの葛藤だったのだろう。
修一は、葵の問いに、静かに答えた。
「そう…あの時、君に話そうと思っていたんだ。でも…」
彼の言葉は途切れた。遠い目をしながら、何かを深く考えているようだった。
「でも、結局、言葉が出なかった。何故、あの時、伝えられなかったのか…今になっては、僕自身も、わからなくなっているんだ」
彼の声には、後悔と、説明しきれない複雑な感情が混じっていた。葵の心を慮るあまり、あるいは、自身の過去を明かすことで、せっかく芽生え始めた二人の関係を壊してしまうことを恐れたのかもしれない。あるいは、あの時の葵の絶望があまりにも深く、これ以上苦しませたくないという思いが、彼の口を閉ざさせたのかもしれない。理由が何であれ、修一は、その時の自身の判断を、今、深く見つめ直していた。




