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27 苦渋の決断
希穂は、この事実を知った当初、葵に伝えるべきか激しく迷った。
ようやく平穏を取り戻し、笑顔を見せ始めた親友の心を、再び傷つけたくなかった。しかし、報道のプロとしての嗅覚と、何より大切な親友を想う気持ちが、彼女に「このままではいけない」と告げていた。いつか、どこかで、この過去が明るみに出た時、葵が受ける衝撃は計り知れないだろう。その時、そばにいる自分が知っていながら伝えなかったことを、後悔するに違いない。
苦しい決断だった。それでも、この先ずっと真実を隠し通すことはできないと判断した希穂は、自らの手で、再び葵の心に痛みを突きつけることを覚悟したのだ。
「ごめんね、葵ちゃん。でも…どうしても隠しておくのは良くないと思ったの」
電話の向こうで、希穂の小さな謝罪の声が聞こえた。それは、深い優しさと、親友を想うがゆえの苦渋の決断だった。しかし、葵の耳には、その言葉は届いていなかった。彼女の頭の中は、修一の「傷害事件」という言葉で埋め尽くされ、再び深い混乱の渦に飲み込まれようとしていた。




