19 涙の告白
次の日、いつもの公園のベンチ。柔らかな木漏れ日が降り注ぐ中、あたりに人がいないことを確認した葵は隣に座る修一に、意を決して切り出した。
「修一さん、実は私ね…」
言葉の続きが、喉の奥に詰まる。胸の奥から、言いようのない塊がせり上がってくるようだった。修一は何も言わず、ただ静かに葵の言葉を待っていた。その沈黙が、かえって葵の決意を後押しする。
「私、あの…数ヶ月前…」
声が震える。あの憎むべきゴシップ記事の見出し、拡散された動画、賢吾の裏切り、堤の距離。忘れ去りたいと願った過去が、嫌応なしに鮮明に脳裏に蘇る。言葉にするたびに、その時の屈辱と絶望が、まるで現実に再び襲いかかるかのように、葵の全身を貫いた。
「エステサロンで、盗撮されて…その動画が、ネットに…」
最後まで言い終える前に、葵の目から大粒の涙があふれ出した。一つ、また一つと、頬を伝い落ちる雫は、止めどなく溢れてくる。悔しさ、悲しみ、怒り、そして、誰にも言えずに抱え込んできた途方もない孤独。それら全ての感情が、堰を切ったように込み上げてきたのだ。
言葉にならない嗚咽が漏れ、葵は顔を両手で覆った。修一は、ただ黙って葵の隣に座っていた。彼がどんな反応を示すのか、怖い。しかし、全てを打ち明ける覚悟を決めた以上、もう後戻りはできなかった。