18 決意
「修一さんに、過去のことを知られたらどうしよう」という不安がある一方で、「修一さんには隠し事をしていたくない」という、もう一つの切なる思いも存在していた。葵の心は、今この二つの感情の狭間で激しく揺れ動いていた。修一と過ごす時間が増え、彼への信頼と愛情が深まるほど、過去の出来事が、まるで二人の間に横たわる暗い影のように感じられた。
彼に知られてしまえば、この穏やかな関係が壊れてしまうかもしれない。彼が自分から離れていくかもしれない。その恐怖は、まるで全身を縛り付ける鎖のように重かった。しかし、同時に、これ以上彼に隠し事をしながら、今の関係を続けていくことはできないという思いも募っていった。もし、このまま関係が進展したとして、いつか彼が真実を知った時、それが原因で彼を失うことになったら? それは、今の葵にとって、何よりも耐え難いことだった。
深い呼吸を一つ、葵は決意を固めた。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、この関係を前に進めることはできない。たとえ、どんな結果が待っていようとも、彼にすべてを打ち明けるべきだ。それが、彼への誠意であり、そして何よりも、自分自身が過去と向き合い、本当の意味で前に進むために必要なことなのだと。
『話そう…全部』
関係が壊れてしまうかもしれないという恐怖と、それでも真実を伝えるべきだという覚悟。葛藤の末、葵は修一に自身の過去を打ち明けることを決心した。それは、彼女にとって、これまでの人生で最も勇気のいる選択だったかもしれない。