14 期待と不安の狭間
約束の日、空は葵の心を映すかのように、どこまでも晴れ渡っていた。透き通るような青空に、白い雲が悠々と流れていく。まるで、二人の前途を祝しているかのようだった。
駅で修一と待ち合わせ、電車に揺られ、隣町にある市立公園へと向かう。普段の散歩とは違い、遠出すること自体が久しぶりだった。修一と二人きりで、いつもと違う場所へ。そう考えると、葵の胸には、かすかな高揚感と共に、やはり拭いきれない緊張と不安が押し寄せてきた。
『本当に、大丈夫かな…』
電車の中で窓の外を眺めながら、葵はそっと息を吐いた。彼の穏やかさに甘えているだけではないだろうか。
『私から話すことなんて、何もないかもしれない。もし、沈黙が続いたらどうしよう』
そんな思いが、頭の中をぐるぐると巡る。彼の隣にいる安心感と、この壊れかけた自分が彼にとって重荷になるのではないかという恐れ。相反する感情が、葵の心を揺さぶっていた。それでも、隣に座る修一の穏やかな横顔を見ていると、少しずつ心が落ち着いてくる。
『きっと大丈夫』
そう言い聞かせながら、葵は小さく、しかし確かな一歩を踏み出そうとしていた。