表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/38

13 揺れる心

「隣町に、市立公園があるんです。晴れた日のあそこから見る景色には、本当に癒されますよ。よかったら今度一緒に行きませんか?」


 修一の穏やかな誘いに、葵の心は大きく揺れた。断る理由などどこにもなかった。むしろ、彼の言葉は、凍り付いた心を温める、小さな、しかし確かな光のように感じられた。それでも、長らく閉ざしていた心が、すぐに素直に喜びを表すことはできなかった。


 こんな傷だらけの自分と、本当に彼が一緒にいて楽しいのだろうか。会話が続くのだろうか。そんな不安が、すぐに心をよぎった。

『今の私で大丈夫かしら…?』

『話、持つかな…』


 かつてであればどんな話題でも淀みなく話せたはずなのに。今は、自分の中に空虚な空間が広がっているようで、何を話せばいいのか、見当もつかない。しかし、その声とは裏腹に、葵の胸の内には、確かに温かい感情が湧き上がっていた。

『嬉しい…』


 この数ヶ月、誰かと出かけることなど、考えもしなかった。賢吾の裏切りで、男性に対して深く心を閉ざしてしまったはずなのに、修一に対しては、不思議と警戒心がなかった。むしろ、彼の誘いが、どんよりと淀んでいた日々に、新しい色を差してくれるような気がしたのだ。

「ええ…ぜひ」


 か細い声だったが、葵は修一の誘いを受け入れた。彼の前では、無理に笑顔を作る必要も、完璧な自分を演じる必要もなかった。ただ、ありのままの自分でいられる。その安心感が、葵の背中をそっと押してくれた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ