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13 揺れる心

 「隣町に、市立公園があるんです。晴れた日のあそこから見る景色には、本当に癒されますよ。よかったら今度一緒に行きませんか?」


 修一の穏やかな誘いに、葵の心は大きく揺れた。断る理由などどこにもなかった。むしろ、彼の言葉は、凍り付いた心を温める、小さな、しかし確かな光のように感じられた。それでも、長らく閉ざしていた心が、すぐに素直に喜びを表すことはできなかった。


 彼の誘いは嬉しい。その気持ちに間違いはない。しかし、こんな傷だらけの自分とずっと一緒にいて、彼は本当に楽しいのだろうか。いつものように公園で会って少しお話をするのとはわけが違う。会話が続くのだろうか。そんな不安が、すぐに心をよぎった。

 『今の私で大丈夫かしら…?』

 『話、持つかな…』


 かつてであればどんな話題でも淀みなく話せたはずなのに。今は、自分の中に空虚な空間が広がっているようで、何を話せばいいのか、見当もつかない。しかし、その声とは裏腹に、葵の胸の内には、確かに 温かい感情が湧き上がっていた。

 『嬉しい…』


 この数ヶ月、誰かと出かけることなど、考えもしなかった。賢吾の裏切りで、男性に対して深く心を閉ざしてしまったはずなのに、修一に対しては、不思議と警戒心がなかった。むしろ、彼の誘いが、どんよりと淀んでいた日々に、新しい色を差してくれるような気がしたのだ。

 「ええ…ぜひ」


 か細い声だったが、葵は修一の誘いを受け入れた。彼の前では、無理に笑顔を作る必要も、完璧な自分を演じる必要もなかった。ただ、ありのままの自分でいられる。その安心感が、葵の背中をそっと押してくれた。






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