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錬金術師のゆるふわ離島開拓記  作者: 森田季節
水吐きヘビ

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30 水源

 その日の夕飯は、クレールおばさんではなくて、村長宅におよばれになった。

 村長として、井戸の改良に正式にお礼を言わせてほしいとのことだった。


 気にしなくていいですと言いたいところだけど、してもらったほうとしてはなあなあにしたくないだろう。その気持ちもわかるので、接待してもらった。


 こういう時、リルリルが好き嫌いなく、大量に食べてくれるので助かる。おごられた側があんまり手をつけないのも失礼なので。



 村長に丁重に見送られて、私たちは村の夜道を歩いた。

 そして、すぐにリルリルが切りだしてきた。


「のう、フレイア。今回の発明は心残りがあるのか? 浮かぬ顔とまでは言わぬが、楽しんでいるふりをしておるように見えるぞ」


「いやあ、洞察力がありますね。あるいは、私の反応がわかりやすいのか」

 私はわざと井戸のほうを経由して帰ることにした。


 井戸は村の中心にあるので、アクセスは容易だ。村長宅からも近い。

 私は井戸のへりをぺちぺち叩いた。


「井戸は改良できました。が、まず、井戸でどうにかしなきゃいけないのがおかしいんですよ。リルリルはよく知ってるはずじゃないですか?」

 リルリルの視線が上を向く。


 月夜と少女の組み合わせはけっこう似合うなと思った。

「ああ、そういえば、以前はそんなにいらんというぐらいに清い水がどんどんやってきておったな」


「そういうことです。この村はかつて上水道が通っていたんです。クレールおばさんがはっきり言ってました。それがいつしかれてしまったので、井戸に頼っていると。井戸の深さは五十メートルはありました。もっと深い井戸もありますけど、浅いとは決して言えません」


 そう、井戸そのものが、やむをえない選択で使われているものなのだ。

「水を汲む作業を軽減しても、まだまだ非効率です。上水道が残っていればバケツの水だってすぐに満ちたでしょうし、水路を分流させることだってできたでしょう」


「地下の水脈に変化ができてしまったのかのう」

 一般論としてはそういうことになるだろう。


「本当にそうなのかもしれません。ですが、この島の山のほうで開発がはじまった事実なんてないですし、気候が激変して雨が一切降らなくなったわけでもないはずです。きわめつけに、工房の裏手はやけに湿ってるんです。植物を見ればすぐわかります」


「じゃあ、水はまだまだ豊富にあるはずだ、ということか?」

 私はこくりとうなずく。


「そうです。上水道再生計画は実現可能です。それに比べたら、井戸を便利にしましたなんて、小技も小技です。なので、次に私たちがすべきことは――」


「「水源」」


 リルリルと私の声が重なった。


「そういうことです。水源さえ見つかれば、上水道は必ず再生できます。カノン村は水が来てないだけ。来るようにすればはるかに便利になります!」


 クレールおばさんにお世話になろうと、工房に住むようになろうと、村の生活向上は私の生活にも結びつく。


 自分たちの生活が楽になればなるほど、工房をやってる娘の面倒も見てやろうかという気になるからだ。


 これは私が楽をするためにも捨てておけない問題なのだ。

 リルリルが私の右手をぎゅっと握る。


 なんだ、手をつないで歩くのかと思ったけど、違った。

 リルリルが思いきり、手を振り上げる。


 私のバランスが崩れそうになるぐらい。

「やるぞ! 余もしっかり働く! 守護幻獣らしいところを見せてやるのじゃ!」


「そ、そうですね! ……意気込みはわかったから、あまり引っ張らないでください!」


 私は引きずられるようにして、クレールおばさんのおうちへと帰っていった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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