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錬金術師のゆるふわ離島開拓記  作者: 森田季節
ポーション対決

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104 司会が偉そうすぎる

「皆の者、聞こえておるか~!」


 幕の外からとてつもない大声が聞こえてきた!


 風もないのに観客の目に触れないようにする幕が本当に揺れた。

 言うまでもなくリルリルだ。



「今日は王都の学院の若い錬金術師一位と二位の因縁の対決じゃ! 島の人間も仕事で島に立ち寄っておる人間もしかと見届けるがよい!」


 歓声がそれに続いてあがる。

 司会業は見事にこなしてるな。小娘の姿とは思えないほどに貫禄がある。


 ただ、因縁なのは向こうからだけで、こっちはとくに感想も何もないけど……。

 今回の件で感情的な人ということがわかったのみ。


「幻獣ってあんなに目立つものなんですわね。もっとひっそり信仰されてるものと思ってましたわ」

「小さな島だから許されてるんでしょうね。この島、大きな宗教の教会もないので」


 リルリルが場を温めている間に私とナーティアはできたポーションをビンに入れていった。

 どうせすぐ飲まれるんだろうけど、いきなりコップに入れるのも芸がない。できた料理を厨房で食べるわけにいかないようなものだ。


「よしっ! できました!」

 ビンに入った一見、工房での売り物と区別のつかないポーションが並んだ。


 こっちから報告に行ったわけでもないのに中年の女性スタッフが出てきて、ビンを運んでいった。


「あの、スタッフさん、代官屋敷で働いてる方ですよね?」

「こういう時はお嬢様に駆り出されますので」


 代官に仕える人たちも大変だ。

「でも、お嬢様が楽しんでいるのを見ると、それなりに楽しいものなんですよ」


 よくできた人たちだ。

 それと、代官が小娘だと成長を見守ることができるので、そこもいいのかもしれない。


 私もリルリルがもし大男の姿をしていたらもっと腹が立つ局面はあったと思う。世の中には「子供が言ってるから許してやろう」と思ってしまうことは多い。


「フレイア様たちも前に出ていただけますか。対戦相手の方と並んでいただきます」

 目立ちたくはないけど、エメリーヌさんを巻き込んでしまった以上、これぐらいは仕方ないか。


 祭りの盛り上げ役になってやろうじゃないか。











 私が出ていくと、私が島で聞いた中で最大の声が上がった。

 どこからこれだけ集まったんだというぐらいの人がひしめいている。


 前に出ているのは、私と対戦相手のアルメリーゼさん、それから司会役を勝手にやっているリルリル。


 その少し後ろに、着席している審査員の漁師さんや船乗り合計十一名。

「さあ、錬金術師が揃ったのじゃ! 二人とも、何か意気込みのようなものはあるか?」


 リルリルがまずアルメリーゼさんのほうに尋ねる。

 アルメリーゼさんはわざわざこっちをにらみつけてくる。相変わらず敵意はむきだしのようだ。


 別にいいか。今更、にへらにへら笑われたらこっちが怒る。

 あなたのためにここまでお膳立てしたんだからな。


「彼女を倒して、私のやってきた道が間違ってなかったということを証明してみせます!」

 あなたが二位だろうと五十位だろうと、道が間違ってたという奴がいれば、間違ってるのはそいつのほうだ。懸命に生きて今が充実してるならそれでいいだろ。


 ――というようなことは、こっちが話す順番ではないので言わないでおいた。私だってたまには空気を読む。


「一方、フレイアはどうじゃ?」

「あ、ええと、う~ん……。努力します」


「真面目に答えんか!」「真面目に答えなさい!」


 なんで弟子と敵に同じ文句を言われなきゃならないんだ。かぶるのはおかしいだろ。


「努力するって答えに問題はないでしょ? やる気ないですって言って怒られるのならわかりますけど……」

「態度から意欲が感じられんのじゃ。対戦相手に意欲がない勝負はつまらん!」


「言いたいことはわかります。でも、勝負は全力でやりましたよ。私のポーションが勝ちますから。やる気がないのは、すでに勝利を確信してるからです」


「へえ、言ってくれるじゃん」


 アルメリーゼさんがひきつった顔で笑った。

 怒ると笑ってしまう時があるけど、そんな気持ちなんだろう。


「ワタシは工房で勤務して、先輩錬金術師の方々から多くのテクニックや知恵を学んできた。期間は短いけど、学生の頃から確実にポーション作りは成長してる。その力を見せったげる」

「おお、卒業後に教えてくれる人が身近にいるのはよいことですね」

 これは本音だ。過疎地の工房に赴任すると、先輩から教わる機会もないからな。


 もっとも、先輩と人間関係が上手く築けないリスクもあるから、いちがいにいいとは言えないのかな……。


「あなたはこの島で先輩はどこにもいない。卒業後の伸びしろはワタシのほうが圧倒的に上。だから、勝てる!」


 客席から「たしかに」なんて声が飛んだ。


 うん、卒業後に私が先輩から学べないという点において、その論理は正しい。

 まあ、学生的な価値観が抜けてないと思うけど、そこは勝負で教えてやろう。


「それで、司会者の方、この勝負どうやって決めるんですか? 細かいルールを教えてくださいよ」

「まあ、せかすな。せかすな。余が過不足なく伝えやろう」


 司会者が偉そうすぎる。

 自分が主役であることに慣れすぎてるな。


「すでに審査員十一人の前にはポーションが二つ置いてあるじゃろ。それを自由な順番で飲んでもらって優劣を決めてもらう」


 テーブルはビンだらけだが、錬金術師からすれば普段と変わらない光景だ。店はもっとビンであふれている。


「審査員の前には名前を書いた布を置いてある。勝ったと思うほうをあとで掲げる。自分は甲乙つけがたいから同点というのは禁止じゃ」


 審査員の一人が布を掲げてみせた。船とかで不要になった帆布だな。再利用というわけらしい。


「審査員は奇数。じゃあ、絶対に勝ちと負けが決まるってわけね」

 アルメリーゼさんは早くも右手を握りしめた。


「同点でしたってぬるい結末にならないのは上等! やってやろうじゃん!」

 血の気が多いなあ……。鎮静作用のある薬草でも煎じて飲ませてあげたい。


「それじゃ、審査員たちは勝手に飲むがよい。コップも用意しておるじゃろ」

 とことん偉そうな司会者が審査員に指示した。


 審査員たちはうなずいたり、すぐにビンのふたを開けたりして、試飲に入る。観客たちはその様子を見守っている。


 地味な大会だと思うけど、それでもこれだけ人が集まるぐらいには暇なんだろう。島の人たちの娯楽になってるなら光栄ではある。


「では、試飲の間、ポーションの特性でも聞くとするかの。アルメリーゼよ、今回のポーションの特徴は?」


「一言で言えば、超高級ポーションってとこね」


 やっぱり、その方向性か。


「あんたはなんで薄ら笑いしたわけ?」

 また、にらまれた。

GAノベルから2巻の発売が決定しました! 4月中旬発売予定です! 今後ともよろしくお願いいたします!

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