1 異能学園に入学したらしいですよ
すたーつ
電車が揺れる。窓の外には地元には無いような高いビルにショッピングモール、遊園地などが見える。
「すっげぇ賑わってんなぁ。しかし今見えてんのが全部学園の敷地とか広すぎだろ」
アナウンスが鳴る。
「第1異能学園前、第1異能学園前駅になります。右側の扉が開きます。ホームと扉の間が空いています、足元にお気をつけください」
「やっとついたぜ、ちょっと遠かったな」
思いっきり伸びをする。
「やっべ、もう遅刻すんじゃね?」
突然、椿の目の前の空間が歪んで化け物が現れた。
その化け物の全長は2m半ほど。さらに異常なほど発達した筋肉が目立つ牛の化け物。いわゆる『ミノタウロス』と言うやつだ。
「あ?」
駅構内の至る所から人々の悲鳴が上がる。 無機質な駅のアナウンスが鳴る。
『皆さん、落ち着いて避難してください。繰り返します。落ち着いて避難してください』
椿は逃げる人々反対、そうミノタウロスに向かって歩いていく。
「ふっざけんな!お前のせいで遅刻だよ!!!」
一閃。叫びながら椿がミノタウロスを持っていた木刀で縦真っ二つ。理不尽に遅刻の責任を擦り付けられた上に真っ二つにされたミノタウロスの目には少し涙が見えた気がした。
「あーあ、さっさと学園に行かねーと入学式に遅れちまう。ちょっと急ぐか」
カバンを軽く持ち直し椿は言葉とは裏腹にゆっくりと歩き出した。
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「まずは皆さん入学おめでとうございます。今日から皆さんはこの学園の生徒です。今から入学式の前に今から少し今日の予定とこの学園について知っておかなければならないルールについて説明しま…」
「ギリギリセーフ!!!」
担任の話の途中に椿が教室のドアを蹴破って盛大に入室してきた。クラスが数秒の静けさに襲われる。
「あれ?」
「あれ?じゃねぇよこのボケナスが!!!」
教室の後ろの方から椿の頭に杖が飛んできた。
「がはっ…………」
その杖が椿の眉間に直撃。そのまま床に白目を向いて倒れる。
「すみません先生、この馬鹿がお騒がせして。さ、話の続きをお願いします」
「あ、ありがとうございます、イキシアさん。で、でもその子は大丈夫なのですか?私が治さなくてもいいのですか?」
そう不安そうに首を傾げて聞くこの低身長の小学生に見られてもおかしくないロリっ子は実はこのクラスの担任だ。
「いいんですよ先生。この馬鹿がこのくらいでくたばるわけないんですから」
そう言いながら椿の首根っこを掴み引きずって席まで運んでいるのはイキシア・バドリッジ。金髪と空色の目が美しい今年の入学生でありこの学年の主席でもある。
イキシアは文武両道。その上容姿も非の打ち所がなく性格までもがまさに『完璧』というのが同級生のイキシアへの印象であった。
椿のダイナミック入室とそれを鮮やかに収めたイキシアの衝撃が強すぎてクラスメイトのほとんどは先生の話が頭に入らず入学式前オリエンテーションは終わって行った。
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「まじイキシアのやつ思いっきり杖投げやがって、絶対許さねぇ」
「まぁ、お前らいつもそんな感じじゃねぇか」
杖の跡がついた額をさすりながら愚痴をこぼす椿の横を歩くのは幼なじみで黒髪で鋭い目付きの月季だ。
「おかしいだろ!あいつのせいで俺の友達100人計画がだいなしじゃねぇかよぉぉぉぉ」
「まぁ無理だろ、お前ゴミみたいな性格してるしな」
「何をおっしゃる月季さん。僕はこの世に舞い降りた天使よりも美しい性格をしているのですよ?」
「恐ろしいほど澄んだ眼をするな。ふざけたこと言ってんなよ。天使に謝れ」
「鬼は知ってっけど天使は見た事ねーから謝れねぇなぁ。ははは」
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駅の構内に5人の足音が響く。足音の正体達 達は全身黒色で上下をプロテクターで固めヘルメットを被っている。
この集団達は一般的に異世界からこの世界に呼び寄せられたモンスターから一般人をも守るための特殊部隊、人々はこの部隊を『repulse monster』と呼ぶ。
「なんだ…これ?」
駅にB級上位のモンスター、ミノタウロスが一体出現との報告を受け駆けつけた5人の隊員達。しかしそこに居たのはミノタウロスではなく、ただの事切れた真っ二つの死体だった。
「誰がやったんだこんなの……たった一撃でミノタウロスを撃破できる人物なんて……俺でもできないぞこんなの」
そう呟くのはrepulse monsterA級下位隊員の本田 蓮。今回のミノタウロスの対応の部隊長を任されている。
「隊長これって学園の生徒の仕業じゃないですか?」
監視カメラの映像を清水に見せながら隊員は言う。
「このネクタイの色は、、」
「青色ですね、、、ということは…」
「ああ、やったのはこの学園に今年入学する生徒だろうな。、、、、恐ろしいガキもいたもんだな」
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目の前に大きなドームが見えてきた。これがこの学校の闘技場で今から入学式が行われるところだ。闘技場は大きく。観客席には3万人も入るらしい。
入口の機器に生徒証をかざしドームの中に入る。
座席の位置は指定されて居ないので適当な位置に座る。
「やっぱでけぇよなここ」
「だなぁ、あの真ん中の所から生徒会長とか学長とかが挨拶やらありがたい言葉やらくれんだろ?」
「そうだな」
「見えねー、ちっさすぎて見えないよ、ねぇ月季さん」
「ああ、そうだな」
「さっきから冷たくないですか!?ねぇ!ねぇ!」
「うるせぇよ!入学式もう始まんだろ!静かにしろや!!!」
周りを見るとほぼ全ての生徒が既に着席を済ませて静かに入学式の開始を待っていた。周りの生徒からの冷ややかな視線が椿と月季につきささる。
「おい、お前のことみんな見てるぞ、なんかしたのかお前」
「おめーのせいだろうが!」
こそこそと小声で二人が話す。と同時に入学式が始まった。
『只今より、国立第一異能学園入学式を執り行います。初めに生徒会長の挨拶』
「皆さんまずは入学おめでとうございます」
そう言って闘技場の真ん中で挨拶をしはじめたのは黒髪の少女。特徴的なのは青色と金色のオッドアイだということか。可愛いが名前を聞き損ねた。後で聞きに行こう。
『続いて学園長の挨拶』
「皆さんまずは入学おめでとう!儂は君たちに嫌われるのは嫌じゃから挨拶は短めと決めておる。わしのことはおじいちゃんとでも思ってくれ。わしは君たちみんな、家族だと思っておるからの。この学園は自由じゃ。盛大に楽しんでおくれ」
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「割とすぐ終わったな入学式」
学生が最も時間が取られると思っていた学園長挨拶。
事実ほとんどの入学式の大半は学園長の挨拶に時間を取られる。それがあの短時間で終わったのだ。入学式が短いのも道理だ。
「この後はなんもないっけ?」
「ああ、なんもないぞ。んじゃ、寮に帰るぞ。お前遅刻したからどうせ寮の位置も知らねーんだろ」
「んなわけねーだろ!」
「わかったからさっさと帰んぞ、椿」
「いって」
月季が椿の頭をこずいて2人は寮に歩いていく。
えんどっ