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8月13日 夏休み、隣の席の女の子と神社に行きました。

「ほら、大地。早く歩いて!」

「もう、疲れたよ。あと、どのくらいあるの?」

「あとちょっとだから、頑張って。」


夏の真昼の太陽がじりじりとが地面を照らし、蝉が鳴き喚くなだらかな坂道を15分ほど登り続けた俺の体力は限界を迎えようとしていた。

俺とは反対に元気が有り余った和奏は俺の何十メートル先を歩いている。


「大地~。見えたよ~。」


こっちに向かって思いっきり手を振っている和奏の場所まで残りの力を振り絞って歩き、ようやく俺の目にも安和神社が目に入って来た。


何段かある階段の先に聳え立つ石造りの鳥居。

鳥居から伸びる参道の向こうには立派な御社殿が建っていた。


「立派な神社だな。」


俺はそう言いながら階段を上って行き、鳥居の前まで来ると立ち止まって一礼をする。


「大地、しっかりしてんじゃん。」

「まぁ、昨日調べたからな。」

「あたしにもそれくらい丁寧に接してくれてもいいんだよ。」

「それとこれとは別だ。」


そんな言い合いをしながら、鳥居をくぐり、手水舎では手、口を清めると御社殿に向かった。


鈴を鳴らし、お賽銭を入れ、姿勢を正し深いお辞儀を2回する。

胸の高さで、右手を少しずらして手を合わせ、肩幅程度に両手を開き、2回打つ。


『和奏が、幸せになりますように。』


俺はそうお願いをして、もう一度お辞儀をした。


俺はお参りを終えて和奏の方を向くと、彼女は顔を赤らめてこちらを見つめていた。


「大地の馬鹿。」


和奏の急なそんな発言に俺は動揺する。


「どうしたの、急に。」

「ここは私の神社って言ったよね!」

「うん。」

「大地のお願いも私の所に届くの!ここの神は私なんだから大地のお願いは筒抜けなのよ!!」

「そ、そうなの!?」

「当たり前でしょ!」


俺は自分の願い事を思い出しそれを聞かれた恥ずかしさでいたたまれなさを感じていると俺の背中に何かが乗っかって来た。


「大地のバーカ。」


俺の耳元でそんな声がして見てみると、そこには和奏がいたのだ。

俺は驚いた。

なぜなら俺は今彼女に触れているからだ。


「なんで!?」

「驚いた?」

「何で和奏に触れられるの?」

「今日から16日まではお盆でしょ?お盆の間だけは私、実態があるんだ。」

「そうなの!?」

「そうなの。それじゃあ私疲れたから、このおんぶのまま家に帰ろ。重いとか言ったら殺すからね~。」


俺の背中には確かに和奏が乗っかっている。

俺の首に回されている真っ白い二本の腕。

俺の耳に掛かる彼女の吐息。

俺の背中に当たっている彼女の........。


全てが本物。


俺は高鳴る心を押さえながら、和奏をおんぶして家に帰った。

疲れはとうに吹き飛んでいたが、背負っているということもあり来た時の何倍もの時間がかかった。


家に着いた後は何にもなく、ただ落ちるように眠りについた。




――――――――――――



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