第5.5話 デザイン重視と最新機種と楽々フォン
【みんなで手伝う】
→【1年に任せる】
雪永先輩と合流し、二人で婆ちゃんとの待ち合わせ場所に向かっていた。
先輩が急ごうとするものだから、わざとゆっくり目に歩き先輩の歩幅を調整する。そもそも遅れている訳ではないし、なんの問題もない。
そうして先輩と並び、ゆっくりと歩きいよいよ目的地が近くなって来た時、遠目からでも分かるほどの異様なオーラを振り撒く御仁がいた。
「ま、まさか……あの方が?」
「ええ、俺の祖母です」
高級そうな着物を纏い、品のある日傘をさしている淑女。とてもじゃないが、これからスマホの機種変更に向かいますといった格好ではない。
そんな婆ちゃんの姿を見て、萎縮気味な先輩に安心するように声を掛けた。
「わ、私の恰好……失礼じゃないかしら……」
「大丈夫ですって。そもそも俺の恰好もですし……それに隣にいる人を見て下さいよ」
そんなピシッと着物を着こなす和装美人の隣で、暑いのか扇子を忙しなく動かしている老人がいた。
アロハシャツにハーフパンツ、サンダルにグラサン。一体どこの南国からやって来たジジイだろうか?
「隣にいる南国爺が祖父です」
「え、他人だと思ってた……」
驚き固まる先輩。それも仕方がない。
片や何かの公式会談にでも参加するのかと言ったほどの恰好をする人の隣で、どこのビーチに繰り出すつもりなのかといった格好の陽気ジジイ。
しかしこれはいつもの事だった。婆ちゃんは外出時のほとんどが着物だし、爺ちゃんは冬でもハーフパンツだ。
「おお! おったぞ! こっちじゃ行人!」
「恥ずかしいので大きな声を出さないで下さい」
向こうも俺達に気づいたようだが、爺ちゃんの大声が辺りに響き渡った影響で若干の注目を浴びてしまった。
そのため俺達は小走りで二人の元に駆け寄った。
「婆ちゃん久しぶり……爺ちゃんも来たんだね」
「来て悪いか! 道場に来ない言うなら、儂が行ったる思うてな!」
「こんにちは行人ちゃん。それで、そちらの御方が?」
ガハガハ笑う爺ちゃんを放っておき、婆ちゃんは俺に雪永先輩の紹介を促した。
一歩後ろにいた先輩が前に進み出たのを見た俺は、二人に先輩を紹介する。
「学園の先輩で、雪永睦姫さん。先輩、こちらは俺の祖父と祖母の……」
「初めまして。行人の祖母で地道百々枝と申します」
「儂は地道剛斗。行人共々よろしく頼むぞ、お嬢」
小さく頭を下げる婆ちゃんと、扇子を動かしながら偉そうに挨拶する爺ちゃん。
「初めまして、雪永睦姫と申します。いつも行人さんには大変お世話になっております」
深々と頭を下げ挨拶してくれた雪永先輩。頭を上げた時の表情は、若干の緊張感が見られたもののいつもの凛々しい先輩だった。
「今日はすみません、お邪魔してしまいまして」
「全く問題ありませんよ? 邪魔なのはこのジジイだけですから」
「まだ言うかっ!? まったく口が減らないババアだ!」
「二人とも、今日は先輩もいるんだから、いつものは止めてよね」
放っておいたら延々とこのやり取りを繰り返すのだろうから、今の内に釘を刺しておこう。
俺や家族は見慣れたものだが、周りからすると険悪に見えてしまうだろうからな。
「先輩、この二人はいつもこんな感じなんで、気にしないで下さい」
「……羨ましいわ。私も将来はああなりたいものね」
「え……? あんな言い合いばかりの関係にですか?」
「二人の目や仕草を見れば分かるもの、とても仲が良いのだって」
本当に、どこか羨ましそうに二人の事を眺める先輩。
先輩にはこの二人がどう映っているのだろう? 俺の目にはとてもじゃないが羨ましくは映らない。
「お前のせいで恥をかいてしまったではないか!」
「あなたは存在そのものが恥ずかしいです」
「なんだと!?」
「なんですか?」
「はいはいもう終わり、行くよ?」
本当に終わりそうになかったので、強引に話を終わらせて二人に行動を促す。とりあえずは近くにある大型の家電量販店へと移動を始めた。
しかしこの三人と歩くと凄く目立つな。集まる視線が尋常ではない。
正装と清楚、アロハとラフ。淑女と美人、イケメンとジジイ。なんて不思議な組み合わせなのだと思いながら、俺達は歩き出した。
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――
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「――――これなんかどうですか? 小さ目で先輩に似合いますよ」
「でもなんか病弱そうじゃない? こっちの大きい方が……」
「……見た目で判断してはいけませんよ? ふふ……小さくてもふふっ……この子は強いっす」
「なんで笑うの?」
「おお! これなんか文字が大きくて見やすいではないか!」
「そうですね。あなたにはそれしかないと思います」
「ちなみに婆さんはどれにするつもりだ?」
「私はもちろん最新機種です」
「先輩、スマホを病気から守る方法はあるんで、好きなデザインを選んで下さい」
「そう? じゃあ……地道君が選んでくれた子にしようかしら?」
「最新機種ぅ? なんかずるいぞ! なら儂はこの店で一番高い電話を買う!」
「使いこなせる訳ないでしょう? 悪い事はいいませんから、これにしなさい」
「お嬢はもう決まったんか?」
「はい、これにしようと思います」
「行人ちゃん、何色がいいと思う?」
「婆ちゃんにはそうだね……赤とかよくない? なんか映えるよ」
「あら、随分と可愛らしい機種にしたのですねぇ」
「はい、行人さんが……選んでくれました」
「しかし暗いな、明るく出来んのか?」
「グラサン外しなよ」
色々わちゃわちゃしたが、比較的スムーズにスマホを選び終えた面々。
スマホの選定も済み、契約へと移行していく。先輩は未成年だが、事前に親に同意書なるものを貰っているそうで、契約に問題はないそうだ。
俺は付き添いなので、先輩たちが契約している間は新しいスマホを眺めながら時間を潰していた。
「では親権者様に確認をして参りますので、少々お待ちください」
「はい」
「口座番号……? 儂はそんな番号知らんぞ」
「はぁ……すみません、その書類は私が書きますので、こちらに回して下さい」
まだ時間が掛かりそうだ。爺ちゃんは暇そうにしているが、婆ちゃんは忙しそう。
そんな中、一早く契約を終わらせた先輩が俺の元に駆け寄ってきた。
「お待たせ、地道君」
「スマホ、もう使えるんですか?」
「使えるって言ってたわよ? それで……どうかしら?」
白いスマホを耳に当て、小さく首を傾げながら俺の目を見る先輩は、とても綺麗に見えた。
黒い髪に白いスマホというのが凄く似合っている。
「いい感じじゃないですか。じゃあ先輩……はいこれ」
「うん? なにかしら、これ」
「俺からのプレゼントです。スマホはカバーを付けたり、フィルムを張ったりするのが一般的なんですよ」
「な、なんか悪いわね……貰っていいの?」
「もちろん。というか中身的に、貰ってくれないと困ります」
先輩達が契約している時、色々と見て回っていた時に見つけたスマホカバーを先輩に手渡した。
ラッピングなどはされていないので、プレゼントとは呼べないかもしれないが。
先輩はゆっくりと袋からスマホカバーを取り出し、デザインを確認した瞬間に目を大きく見開いた。
「クマのスマホカバー……?」
「ちょっと可愛すぎましたかね? もし他のが良ければ、それは爺ちゃんに渡しま――――」
「――――だ、だめっ! これでいい……ううん、これがいい」
流石に可愛すぎたかと思ったが、先輩は嬉しそうに顔を綻ばせスマホカバーを受け取ってくれた。
苦戦しながらもスマホにカバーを付けると、少し恥ずかしそうに俺に見せてきた。
「ど、どうかな? 可愛いわよね? クマちゃん……」
「そうですね、可愛いですよ。先輩も」
「あ、ありがとう……」
また顔を赤くして怒って来るだろうと予想していたのだが、先輩は顔を赤くはしたものの怒る事はなく、そのまま俯いてしまった。
先輩にしては珍しく落ち着きがない。大事そうにスマホを持ちながら、俺の目を見たり逸らしたりを繰り返していた。
「行人ちゃん? 私にはないの?」
「え?」
そうこうしている内に婆ちゃん達も契約を終えたようで、気が付いたら後ろに二人の姿があった。
催促するように最新のスマホを差し出す婆ちゃんと、何やら両手で画面をタップしまくっている爺ちゃん。
婆ちゃんの圧に負けたので、婆ちゃんにも新しいスマホカバーをプレゼントした。
「行人、儂には?」
「爺ちゃんはほら、無保護の方が爺ちゃんらしいよ」
「そうか。確かに守るより攻める方が性に合っているな」
スマホを保護しないという事を攻めるとは言わないと思うのだが、爺ちゃんは納得したようなので放っておこう。
その後は四人で軽く昼食を取り、少しノンビリしたのち解散となった。
昼食中、爺ちゃんが暴走して雪永先輩に嫁に来いとか言い出すもんだから困ったりしつつも、和やかに時は流れた。
その後、車で送っていくという爺ちゃん達に断りをいれ、先輩を駅まで送っていく。
先輩は暇さえあればクマスマホをうっとりと眺めるので、人にぶつからないようにフォローするのが大変だった。
どれだけクマが好きなのか、眺めるのはカバーばかり。普通は新しくなったスマホ自体に心惹かれそうなものだが。
まぁなにはともあれ、喜んでくれたのなら良しとしよう。そう思いつつ、先輩と駅で別れた。
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書いてた時にサマー○ォーズの婆ちゃんとパチ○ロ爺サマー(腹は出てない)が浮かびました




