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第4.5話 青春の匂いが良い匂いとは限らない

→【言い訳する】

 【正直に話す】


時雨のお話・後編

人数増えた影響で、少し長め


匂については筆者の思い出に基づいた表現ですので、深く考えないで下さい







 時雨からのSOS電話の内容は、部活で使用する備品などの買い出しを手伝って欲しいとの事だった。


 明日は練習試合があるらしく、今日は明日のための準備や備品確認などを行っていたらしい。


 そうすると、足りない物や壊れた物など色々と不足品が見つかったと。現在、サッカー部のマネージャーは彼女達三人だけらしく、分からない事が多いそうだ。


 そのため急遽、先輩たちに連絡を取るも上手く行かず。重い物なども買う予定があり困っていた所に、時雨が俺と言う切り札を切ったというのが事の顛末だ。



「先輩のマネージャーから教えてもらったりしなかったのか?」


 買い物籠に洗濯に使う洗剤などを詰め込んでいる時雨たちに声を掛けた。もちろん買い物籠は俺が持っている。


「私達がマネージャーになった時は、すでに誰もいなかったんですよ」


「三年に一人だけいたらしいんですけど、学園自体を辞めちゃってて」

「ちょっと後悔したよね。酷いもんだったから、部室とか……」


 女性がおらず男だけの管理となれば、そりゃ酷くもなるか。


 女性が一人いるだけで部署の環境が随分変わると、知り合いの研究員が言っていた事を思い出した。



「も~全部マネージャーに任せっぱなしだったみたいで、誰も何も知らないんだもん」

「ね~、顧問の先生すら首を傾げる事とかあったしね」


 昔は随分と有能なマネージャーがいたようだ。その人が辞めて環境はガタガタ、そのシワ寄せが新人マネージャーの彼女達に圧し掛かってきたと。


「三年の先輩たちは非協力的だしさ」

「引退も近いしね、面倒臭いんだと思うよ」

「あはは。そもそも三年生って、声掛けづらいよね……」


 時雨はまだしも、東森と西林なら平気で話しかけそうだが。


 頼みの綱の二年生も顧問も役に立たなそうだし、彼女達には同情してしまう。


 しかしそれを投げ出さず、休日なのにこうやって頑張っている三人は素晴らしいと思う。


 サッカー部は幸せだろう。彼女達という女神を手放す事になれば、後悔なんてレベルでは済まないな。



「でも手伝ってくれてもよくない!? そもそもお前達のためだっつーのに!」

「部室の掃除はしないし、ゴミ捨てはしないし、臭いし、あと臭いし臭いしっ!」

「あ、あはは……まぁたしかに、ちょっとあの匂いは苦手かも……」


 不満が爆発している、ちょっと口が悪い女神三人。一度愚痴を零したら止まらなくなるのは、先ほどから何度もあった。


 愚痴を零し合える仲間がいるというのが、彼女達にとっての唯一の救いだろう。



「その点、先輩は素敵だよね~。というかサッカー部に入りません?」

「ほんとほんと! 清潔感あるし、なんかさっきからめっちゃ良い匂いするし!」

「え、行人先輩サッカー部に入るんですか!? わ、私尽くしますっ」


 彼女達の問いに苦笑いで答える。彼女達も本気ではないのだろう、特にそれ以上は何も言って来なかった。


 時雨だけは本気だったのか、あからさまに落胆したように見えたが指摘はしなかった。



「そもそも三人は、なんでマネージャーになったんだ?」


「あ、それ聞いちゃいます? 崇高な理由なんてないですよ?」

「サッカーが好きってのはあったけど、サッカー部ってイケメンが多いので」


「なるほど、立派な理由じゃんか」

「「ですよねっ!!」」


 東森と西林はハッキリとそう言い切った。カッコいい同級生や先輩が多いサッカー部、お近づきになるのにマネージャーほど有利な立ち位置はない。


 自分達の世話をしてくれる可愛いマネージャー。自分達だけのマネージャー、尽くしてくれるマネージャー。もう勝負はついたようなもんだよね。



「時雨もそういう理由か?」

「えっと……まぁ、私も最初は……そうだったかもです」


 意外と言えば意外だった時雨の反応。どこか言いづらそうにする時雨だったが、なんだかんだ否定すると思っていた。


 そういう理由でマネージャーになった事が意外だったのではなく、素直に肯定した事が意外だった。





「あと何が必要~?」

「ここでは……あとはゴミ袋くらい? 氷もいる?」

「あとはスポーツ用品店かな? 氷はあるよ」


 細かい買い出しを終えて、次はスポーツ用品店へと向けて歩き出す。


 すでに俺の両腕は買い物袋で塞がっているが、まだ買う物はあるらしい。


 となれば比較的軽めのこれらを女子に持ってもらって、俺は重い物を持つ事にしよう。



「クーラーボックスも買い換えるんだよね?」

「その方がいいよ、今あるの汚いし」

「ストップウォッチと、あとは空気入れも壊れてたよ……」


 聞けば聞くほど、どうやって活動してきたのだろうと思う。


 よく知らないが空気入れなんて、サッカー部には日常的に必要不可欠な物なのではないだろうか? 


 重い物を持つとは言ったが、こりゃ気合いを入れなきゃなさそうだ。



「なあ、その前に昼飯食わないか?」


「あ、そうですね! あたしもお腹すきました!」

「ウチも!」

「そうですね、賛成です。どこに行きますか?」


 三人ともに賛同したため、スポーツ用品店の前に昼食を取る事となった。


 特に行きたい所や希望がなかったため、近くにあったファミリーレストランに入る事に。


 席順は女子たちの中で一悶着あったようだが、俺の隣には東森が、向かい側には時雨が座った。


 メニュー表を眺め、各々食べたいものを選んでいく。女子たちは選ぶのに時間が掛かるだろうな……と思っていたのだが。



「……先輩、まだですか?」

「もう少し」


「男の人って、パパっと選ぶイメージが……」

「貴重な外食なんだ、適当には選べん」


「な、なにで迷っているんですか?」

「豚カツ定食かチーズドリアかカツカレーかペペチか包み焼きハンバーグ」


「「「全然決められてない……」」」


 悩んだ末に鯖味噌定食を選択。他の三人から頼みたいものを聞き、店員さんを呼んだ。


「鯖味噌定食とロコモコ丼と魚介のスープスパ……あとお子様ラン――――」

「――――先輩っ!!」


「……このオムライス、ホワイトソースでお願いします」


 ちょっとふざけただけなのに、料理が来るまでずっと時雨に睨まれた。たまに目を合わせると、慌てて目を逸らす時雨が可愛かったな。



 ――――

 ――

 ―



 昼食後、俺は優雅にアイスコーヒーを飲んでいたが、彼女達三人の姿はなかった。


 彼女達はお手洗い。なんで同時に行くのだと、それを聞くのは野暮というものだ。


 一人ずつではなく三人一緒に行けば、長い短いなどと思われる事がない。あの子トイレなげぇなとか、女子は思われたくないのだ。


 俺は紳士だからな……とカッコつけてストローを齧っていると、三人が戻ってきた。



「先輩、さっき雪永先輩に会いました」

「雪永先輩に? あの人にファミレスのイメージないなぁ」


「あの感じはデートですよ! 男の姿は見えませんでしたけど」

「ふ~ん。ならもう出ようぜ? 先輩も見られたくないかもだし」


 俺は荷物を持ち椅子から立ち上がった。彼女達の準備が整ったのを確認し、俺達は店を出る。


 すると慌てた様子で三人は声を上げた。



「せ、先輩!? お会計忘れてますよ!?」


「もう払ったよ。君達の長い長いトイレの間にね」

「長くないですっ! というか私達も出しますよ!」


「いいから、ここは先輩を立てなさい。それに先輩、お金持ちなんだ」


「え、でも貴重な外食って……メニューもめっちゃ迷ってたのに」

「出しますって! 先輩、無理してませんか!?」


 まぁ財布に五千円しかないのにはビビったが。家に帰ればお金はあるし、俺はカッコつけるためならば母に頭を下げると決めたのだ。


 親のコネは使う、親の力に縋る。誰に非難されようが構わない、そんなもので俺は自分の考えを変えたりしない。


 こういった環境に生まれた俺の運、俺はそれを最大限に利用する。


 ひひひ……使えるものは使うんだ。俺は持っているんだよぉ、運だけはな。


 まぁ数千円程度の事で何を言っているんだと思うが、金額の大きさが変わったとしても俺の考えは変わらないだろう。



「い、行人先輩? なんか悪い顔してますよ?」

「ほんとだ、なんか悪役みたい」

「そんな顔も似合ってるのが何かズルいね」


 俺とした事が顔に出てしまったようだ。すぐさま俺は表情を無難なものに戻し、彼女達を説得し始める。



「頑張ってるお前達へのご褒美だ。まぁ安いご褒美なのは勘弁してくれ」


「そんな事ないです! その……ありがとうございますっ」

「「ごちそうさまですっ!!」」


「そうそう、そうやって可愛く笑ってくれた方が先輩も嬉しいよ」


 三人の可愛らしい笑顔が見れたのだ、それだけで満足である。


 たとえ財布の中が二千円以下になってしまったとしても、彼女達の笑顔が見れたのならよしとしよう。


 そんな笑顔で、心なしか距離が近くなったような気がする三人と一緒に、スポーツ用品店へと向かうのだった。




「ねぇ先輩! やっぱりサッカー部に入って下さいよ!」

「やだ」

「先輩って部活やってないんですよね? いいじゃないですか~」

「いやだ」

「な、なんでですか? サッカー嫌いですか?」

「だって臭いんでしょ」


「「「……まぁ、少し」」」

「絶対いやだ」



 その後用品店でも買い物し、俺達は学園まで来ていた。時雨たちの案内の元、部室棟へと足を運ぶ。


 部室というのは初めて入ったが、なんか青春の匂いがするな。



「くっっさッ!? え……くっさっ!」


「え? 今日はマシな方じゃない?」

「そうだね、昨日のが酷かったよね」

「行人先輩ってば、大袈裟ですよ~」


「お前ら、ちょっと麻痺してんだよ……」


 こんなのが青春の匂いなら俺は青春しなくていいと思いつつ、我慢して荷物を運び入れる。


 この量は本当に女性三人ではキツかっただろう。時雨には遠慮しないで、これからも何かあったら連絡するようにと言い含めた。


 最後に時雨たちにお礼を言われ、部室の前で別れた。


 東森と西林に番号を教えてくれと頼まれたが、知りたいのなら時雨に聞けと言って俺はその場を離れた。


 その後、時雨からはお礼の連絡が再度あったが、二人からはなかったので時雨は二人に俺の番号を教えなかったようだ。


お読み頂き、ありがとうございます


次回選択肢

【お礼を言う】

【行動で示す】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 剣道部の防具より臭そうw
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