第4.0話 後輩というだけで無条件で可愛い
→【雪永先輩】
【時雨愛莉】
時雨のお話・前編
前書き後書きを変更しました
土曜日の朝、俺は自室でぼーっとスマホを眺めていた。
登録されている番号をボケーっと眺めていると、男子の番号より女子の番号の方が多い事に気が付いた。
もちろん知らない人はいない。大部分はクラスメイトの番号だ。クラスの女子が他のクラスの女子に教えてもいいかと聞いてきた事はあったが、それは断った。
クラスメイトに番号を教えるのは構わない。クラス全体のメッセージ部屋もあるので、どうせそこから拾われてしまうだろうし。
クラスメイトは特別だから、そう言うと満足したような顔で引き下がるものだから断るのは簡単だった。
「さて、どうするか」
朝食も取らずにスマホを眺めていたのは、今日の予定を決めあぐねていたからだ。
誰かと会おうと思っても何故か考えは纏まらず。明日は婆ちゃんとの用事があるから、今日は道場に足を運ぶかと考えても、頭のどこかがストップを掛ける。
頭の中を考えが駆け巡るが、目的地に辿り着けない。グルグルと駆け巡っているうちに思考は霧散し、再びボーっとスマホの文字を眺める事に。
どうやらまだ寝惚けているようだ。考えが纏まらない朝というのは、ザラにある。
もう目が覚めてから一時間以上経つが――――
「――――ん……?」
なんだろう? 頭の中に、急に一つの答えが生まれた。答えと言っても、行動の決定が生まれた訳ではない。
正直、なにが決まったのか、なんの答えが出たのかは分からない。
しかしモヤモヤは全くない。思考もクリアで気分スッキリ。今日の予定は決まっていないが決まったようだ。
俺は少し遅めの朝食を適当に済ませ、出かける用事もないのに身支度を整えた。チョイスした服装が、どこか動きやすさを重視した格好だったのはたまたまだろうか。
出かける準備を整えてから、珈琲をいれて一息ついた。
優雅に流れる朝のひと時。最上階にあるフロア丸々が地道家なので、周りの生活音などは全く聞こえず静かなものだ。
そんな静寂を壊したのは、まるで誰からかの連絡を待っているかのように目の前に置かれた、スマホの着信音だった。
――――
――
―
「すみません先輩っ! ありがとうございます!」
「「ありがとうございますっ!」」
待ち合わせ場所に着くなり、頭を下げだした三人の女の子。一人は後輩の時雨愛莉、後ろの二人は時雨の友達のようだ。
土曜日だというのに三人とも制服姿。俺だけラフな格好のため少し浮いてしまっている。
あのスマホの着信音は時雨からだった。若干泣き声になっていた時雨からのSOS、断ると言う選択肢は浮かばなかった。
どうやらサッカー部の買い出しが急遽必要になったのだが、サッカー部の先輩及び顧問の先生は誰も予定が付かず困っていたらしい。
「別にいいよ、暇だったし」
「ほんとすみません……サッカー部でもないのに」
申し訳なさそうに頭を下げる時雨と友達の二人。
後ろの二人はただの友達かとも思ったが、どうやら時雨と同じでサッカー部のマネージャーのようだ。
「まぁサッカー部じゃないけど、可愛い後輩たちのお願いは断れないな」
「あ、ありがとうございます……行人先輩」
「ありがとうございますっ! というか先輩、カッコよすぎません?」
「カッコよすぎです! サッカー部の先輩たちとは大違いですっ」
顔を赤くして俯く時雨と、騒ぎ出した友達二人。仕舞には手前にいた時雨を押しのけて俺に近づいてきた。
「それは顔がか?」
「それだけじゃないですけど、顔もです!」
「サラッと可愛いとか言っちゃうし、そういうの卑怯ですよ」
「可愛いとは言ったけど、顔が可愛いという意味ではないぞ」
「ああ~ひっどぉ~い!」
「ウチ達ってそんなにダメですか?」
「いや~可愛いと思うよ~」
「そんな空返事しないで下さい!」
「しかもスマホ弄りながらだしっ」
ノリがいい二人とその流れで自己紹介を行った。一人は東森さん、もう一人は西林さんと言うらしい。
時雨とは違い、二人の第一印象はthe元気。押し退けられた時雨は後方でアワアワしていた。
ちょっと時雨を放って置き気味かなと思い始めた辺りで、慌てた様子の時雨が再び近づいて来た。
「ちょ、ちょっと二人とも! 行人先輩は私の先輩だからっ離れてっ」
「え~別にいいじゃ~ん? というかあたし達の先輩でもあるでしょ」
「それに愛莉にはいるじゃん? 他に気になってる先輩が」
「な、なに言ってるの!? そんなのいないよっ」
へ~そうなんだ~と、顔を赤くし出した時雨を見て思った。時雨は必死に否定しているが、その様子は肯定してしまっているようなものだ。
その後も弄られ続ける時雨を気の毒に思い、俺は助け舟を出した。
「ほらお前ら、そろそろ動くぞ? 日が暮れちまう」
「あっ……すみません先輩」
三人に行動を促し、一足先に俺は歩き出した。
三人とも言い合うのを止めて、俺に着いて来るのを背中に感じ始めた辺りで、再び三人は騒ぎ出した。
「先輩、そんな急がなくてもまだ昼前ですよ~?」
「それより先輩! 腕組んでもいいですか!?」
「ダメ」
「え~なんでですか~?」
「お前たちは三人だろ、一人余っちまう」
「そ、そういう理由ですか? なんというか……さすがですね先輩」
「というか愛莉は大丈夫ですよ! 他にいるんで! という事でウチたちと……」
俺の両脇に陣取る東森と西林は、今にも腕を伸ばしてきそうな勢いだ。
まぁ掴まれたら仕方ないか……と思った時、それを止めたのは時雨だった。
「だ、だめっ! 絶対にだめ!」
「なんでよ~? いいじゃん愛莉には他にいるんだから」
「いないからっ! 変なこと言わないで!」
「でも先輩の腕は二本しかないからね」
「だったら私だけ腕を組むっ! それでいいでしょ!?」
「「いや、それは一番意味不だよ……」」
女三人寄ればってか奴か? 流石にちょっと騒がしい。
まぁたまにはこういうのもいいか……と思いながら、ならローテーションで腕を組もう! と一致団結を図った三人に溜め息を付きつつ足を動かした。
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