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氷上のシヴァ  作者: 天上杏
第五章 Skater 霧崎洵
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第3話 光と闇

「On the ice, representing Japan, Jun Kirisaki」


 名前をコールされ、リンクに出る。

 両手を挙げて拍手にこたえるも、笑顔までは作る余裕が無い。


「心の奥、中心点から目を逸らすな」

 俺はリンクを回りながら、先生の言葉を頭の中で繰り返していた。


 目を閉じ、心の奥へ潜ってみても、中心なんてものは見えそうにない。

 そこにあるのは、何重にも螺旋を描くうずだ。

 全てがうなりを上げて共鳴し、回転しながらどこかへ向かう。

 その目的地。

 即ち中心点。

 必ず存在するはずなのに、どんなに心の眼を凝らしても暗闇に吸い込まれていく。

 

 俺は自嘲じちょうの笑みを浮かべた。

 ……いいだろう。暗闇なら、受け入れる。

 空白よりかはずっとマシだ。

 ここならば、砂金の霧も暗黒に同じ。


 俺はリンクの中央に立つと、目を見開き、音楽をおびき寄せるように右手を伸ばした。



 氷上は、銀色の雲の海のようだ。

 この美しさを端的に表す固有の言葉があればいいのにと思う。


 だが、俺のトレースには影が落ちる。

 闇が広がる。

 しょくのあちらとこちら。

 向こうにはもちろん、汐音がいる。

 俺は、光にはなれない。


 蝕の影に身を浸しながら、俺は一筋の光を待っていた。

 一瞬でいい。

 天から差す、本物の光を。


 金色の粒子がちらつく。言語を失ったモヤは、虫のような羽音を立ててまとわりつく。

 金色の鱗粉りんぷんをこれ見よがしに撒き散らして。

 ……輝きが、全て光だとは限らない。


 俺は固く心の目をつぶる。

 暗闇を照らすことができるのは、本物の光だけだ。


『トリプルアクセルは、神様からの贈り物なの』

 ……ならば、一筋の光も差さない俺は、神に見放されているということになるな。


「そんなことしてると、転ぶよ」


 俺はハッと目を見開いた。


 今のは、誰の声だ?

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