表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷上のシヴァ  作者: 天上杏
第四章 Sprinter 荻島雷
89/184

第20話 画面の向こうのプリンス

 ホテルに戻って夕食を取った。


 シバちゃんはいつもより食欲が無いのを濱田先生に窘められていた。


 あれからエイちゃんはシバちゃんとは一言も口をきかなかったけれど、憮然としながら当たり前のように同じテーブルに付いたので、僕は少し安心した。


 なるべくスケートとは関係の無い話をしようと思っていた矢先、テレビでは名古屋で行われたという新春アイスショーの特集が流れていて、僕はげんなりした。


 チャンネル変えてくれないかな、と思っていたところ、エイちゃんが急に顔を上げて

「あいつ俺らと同い年だべ」

 と呟いた。


 見ると、霧崎洵というスケーターが映っていた。


 初めて見るジュニアの選手。

 青い布にガラスのビーズを散りばめたハイネックの衣装を着ている。

 少し長めの黒髪をなびかせて氷上で舞う姿は、女子が見れば一発でファンになってしまいそうな少女漫画的オーラがあった。

 僕らとは、完全に無縁の種類の。


 シバちゃんも昔はあんな衣装を着て滑っていたんだろうか。

 ……まるで想像がつかない。

 こんなに長い付き合いなのに、僕は一度もシバちゃんのフィギュアスケートを見たことがなかった。


「……エイジ、フィギュア見るの意外だな」

 シバちゃんが箸を止めて、勇気を出したように口を開いた。


 エイちゃんは少し返事を迷ったような顔をしたけれど、やがてふうと大きく息をついて言った。

「姉貴が好きなんだよ。フィギュアやってると必ずテレビ占領すんの。ギャーギャーうるせーのなんのって。いちいちドヤ顔で解説してくるんだけど、あれ絶対分かってねえし」


「へえ」

 エイちゃんのお姉さんを揶揄する口ぶりに、シバちゃんは頬を緩めた。

 今日初めて見る、シバちゃんの笑顔だった。

 それからほんの少しだけど、シバちゃんの箸が進んだ。


 僕は、遠く離れたスケーターに、心の中でそっと感謝した。

 ……きっかけをくれてありがとう、霧崎洵くん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ