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氷上のシヴァ  作者: 天上杏
第四章 Sprinter 荻島雷
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第18話 回帰不能のフライング

 九組目の選手達がメインレーンに出てきた。


 選手紹介のアナウンスが流れる。

 会場の空気が一気に変わった。


「おい、柏林中の芝浦が走るぞ」

「大会新出るかな」

「バカ、まだ予選だべ。抑えてはくるだろ」

「それでもダントツだろうな」


 ……あちこちから、期待の声が聞こえてくる。

 出るレース全てで注目を集めるシバちゃんは、やっぱりヒーローと言うしかない。

 エイちゃんは、僕の隣で唇を固く結びながらシバちゃんを見つめていた。


 黒、白、赤、青、緑、黄、茶。

 それぞれの色のキャップを被った七人の選手たちが両手を広げて間隔を取り、横一列に並ぶ。

 シバちゃんは、インから数えて四人目、青。

 サングラスで表情は見えない。


「Go to the Start」

 スターターの合図が流れる。いよいよだ。

「Ready」

 全員の姿勢が統一されたように低くなる。スタートの構えだ。


 僕はこの時、あれ、シバちゃん少し震えてるかな、と思った。

 腰からお尻にかけての筋肉が、ほんのちょっとだけガクガクとなっているように見えたのだ。


 ピストルが、二度鳴った。

 フライングだった。

 ……誰だ?

 

 シバちゃんが、飛び出していた。


 シバちゃんのフライングは珍しかった。多分、小学生の時以来だと思う。

 僕はゴクリと唾を飲み込んだ。

 隣の濱田先生とエイちゃんも張り詰めているのが、空気で分かる。


 ……大丈夫、落ち着いて。


 全員が再びスタートラインに戻る。


 しかし、次に目の前で起こった事態は、僕の理解を遙かに超えていた。


「Go to the Start」


「Ready」


 パン! パン! と、再び二度ピストルが鳴った。


「青、フライング。失格です」

 アナウンスが流れる。


 また、シバちゃん一人が、大きく前に飛び出ていた。


 シバちゃんは、滑りの構えをほどききれないまま、顔だけスタートラインを向いた。

 まだ何が起こったのか分かっていない、という顔で。

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