表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷上のシヴァ  作者: 天上杏
第三章 Ruiner 朝霞美優
62/184

第17話 2018世界ジュニア選手権フリー(中継)

 順繰りに曲掛けで練習を行い、ふと時計を見ると七時五十分。


 私達はリンクを降り、隣のアップ室へ移動した。

 生徒だけでなく、救護室の田島さんをはじめ他のスタッフも集まってきた。


「せっかくだから俺も見よっかな。先生、いい?」

 もちろんいいよ、と答え、私はテレビの電源を入れた。


 ストレッチをしながら喋っている女子の輪には流石に入っていけないようで、刀麻君は私と弥栄ちゃんの隣で壁に寄り掛かっている。


 チャンネルをBSに回すと、ちょうど最終グループの六分間練習が終わろうとしているところだった。



 画面に映し出された洵君は、フェンスを挟んで岩瀬先生と二言三言交わしていた。

 気のせいか、洵君の顔色がいつもより青白く見えた。

 緊張しているのだろうか。


 岩瀬先生の眼差しは、眼鏡のレンズを通すと一層鋭く見える。


 この二人は、普通のコーチと選手が行うようなボディタッチを一切しない。

 究極の私的領域である身体を侵さないという信念を共有することで、精神的に手を取り合う。

 そういう絆の結び方が、彼らのやり方であるように見える。

 最後に岩瀬先生が、何か短い言葉を口にした。


 証明しろ。

 唇が、そう動いた気がした。


 洵君は真っ直ぐな目でこくりと頷くと、強い足取りでリンクへと滑り出した。


『最終グループ第一滑走は、日本の霧崎洵、十五歳。今大会が世界ジュニア初出場です。十一月の全日本ジュニア選手権で二位となり、世界ジュニアへの切符を勝ち取りました。所属クラブは前橋FSCと榛名学院中等部。昨日のショートでは会心の演技で堂々の六位』


 国際試合、その頂点の世界ジュニアで、前橋FSCの名前が読み上げられたのは、きっとこれが初めてだ。

 口にこそ出さないが、皆胸がいっぱいになっている。


 洵君が落ち着いた動きで、中央に立った。


「……衣装、変えたのかしら?」

 田島さんが呟き、私は無言で頷いた。

 世界ジュニア用にフリーの衣装を新調したのは知っていた。

 けれど、こうして見るのは私も初めてだ。


『曲は、ミュージカル「エリザベート」』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ