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第38話 Weight of the World
シューズバッグを開ける。
おどろおどろしいことも禍々しいことも何一つ起こっていなかった。
そこには、ただ一足のスケート靴があった。
メーカーも、サイズも、色も。
全てがわたしと同じで、ブレードにはわたしのエッジガードがかぶせられている。
だから、これはわたしの靴。
……そんなわけはない。
これは、洵の靴だ。
よく見ると、革の傷付き方がちがう。
わたしと洵では、エッジの乗り方がちがうということだ。
たった一ミリの、銀色の世界との接線。
静かに持ち上げる。
スケート靴として適切な重さ。
――でも、その本当の重さを、わたしは知ってしまった。
水色の封を解く。
エッジは刃だ。
誰よりもわたしに牙を剥く。
それでも、わたしは氷上へ行かなくてはならない。
たった一つの欲しいものを、本当に欲しいと証明するために。




