表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷上のシヴァ  作者: 天上杏
Bonus Track 第六章 Butterfly 霧崎汐音
138/184

第5話 凝視

 透明なカゴの中。

 立てかけられた割りばしに、モンシロチョウのさなぎが固定されている。

 さなぎにカゴなんて、意味があるのかなと思う。

 だって、さなぎは逃げようがない。


 さなぎはとても柔らかいので、強く触ると潰れてしまいます。

 さなぎは、幼虫から成虫へと生まれ変わる準備をしています。

 その時、ほんのわずかの部分を残して、一度全部溶けます。

 だから、殻の中はドロドロの虫のスープです。


 加藤先生が言うと、オエーッと誰かが叫んで、男子がゲラゲラ笑った。

 女子は、キモい、想像したくない、みんな結構マジな感じで言ってた。

 そんな中、可憐は机の向こう側から、きりっとした顔立ちのまま少し不敵に微笑み、見てみたい、とわたしに向かって唇を動かした。

 わたしは目を丸くした。

 可憐って、虫とか平気なんだ。

 ……まあ、わたしも平気だけど。

 窓から差す光で可憐の茶色い髪の毛はますます茶色に見える。


 はい、静かに。さなぎが殻の中でどうやって蝶になるのかという仕組みは、実はまだ殆ど分かっていません。

 でも、そのドロドロに溶けた虫のスープにも秩序があります。

 秩序というのは決まり事のことです。

 それはわたしたち人間の理解を超えていますが、それでもちゃんとあります。

 それはとても複雑なものです。

 うかつに力を加えたりすると、決まり事が壊れて蝶になれなくなります。

 さなぎのまま死んでしまうのです。

 だから、触らないように。そのためのカゴです。


 ……なるほど。

 

 さらさら、かりかり。鉛筆を動かす音がする。

 わたしは絵が苦手だから、どこから描き始めたらいいのか分からなくてスケッチに手を付けられない。

 仕方が無いからひたすら見ている。

 凝視。

 幼虫でも成虫でもない、どろどろの中身を、透視。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ