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もんもんモンスター  作者: 猪八豚
大怪物屋敷
94/150

94 怪物少女の闘争:一回戦 破壊の上級女神メス vs パンの上級神パンヤ

 再会を喜び合うチャーミー親子の姿を眺めていると、急に目の前がキラキラした光で満ち、次の瞬間には無数の観客たちに囲まれた、驚くほど巨大な円形の闘技場に立っていた。


 これは……話に聞いていた召喚だろうか?


 スモークが炊かれ、風船や紙吹雪が舞い、花火が撃ち上がって会場は大いに湧きあがっている。出場者召喚に伴う演出なのだとは思うが、何処か安っぽい感じがしてしまった。


「何が起こった?」

「呼び出しって、転移するのか……」


 俺と同じように呼び出されたらしい多数の人や動物が周囲を見渡し警戒している中、突然大きな音で軽い感じのアナウンスが流れ出した。


『さあ、戦士の皆様、それぞれのチームの小屋に集まって下さ~い!』


 チームの小屋と言われても……?


「ミライく~~ん! みんな~~! こっち~~! こっちよぉ~~!!」


 声のする方を見ると、闘技場の外に立っている小屋の前で、ヌガー様がぴょんぴょん跳ねて立派な双丘をぶるんぶるんと揺らしながら、ヌガーチームと書かれた旗を振りつつ、拡声器に向かって叫んでいた。


 闘技場の周囲にはチームごとに小屋が用意されていて、大会開催中は小屋の中で生活する形のようだ。俺達の小屋はヌガー様仕様らしく、異様にカラフルな見た目。


 小屋といっても、何気に相当な大きさなのだが……。闘技場が大きすぎて、小さいと感じてしまう。


 闘技場を見下ろすような形の観客席には、人間と変わらない姿の者が多いが、何らかの討伐対象なのではないか? と思える化け物のような姿の者までいた。髪の毛の代わりに蛇が生えているお姉さんも、周囲の者よりも何倍も大きいおじさんも、皆、仲良く声を上げて大騒ぎしている。これが八百万の神々か……。


『さあ、場内の皆様! 今回出場する最強戦士たちが出揃いましたよ~! これより、我らの頂点となる次期神王を決定する為の、神聖な戦いが始まりま~す!』


 再びアナウンスの声が流れ、再び会場が大きく湧き上がる。


『一回戦は、ぶっ壊すことなら何でも彼女におまかせ! その容姿や言動から一部ではぶっ壊れアイドル扱いされている、おなじみの破壊上級女神メスちゃんチームと、皆様も一度は食べたことがあるでしょう? 超老舗パン屋オパンパンでパンを焼きまくる事数万年、もはやパンと一体化しつつあるパンの上級神パンヤくんチームの戦いになりま~す!』


 うわああああ~っ!! と盛り上がる会場だが、当然俺はどちらの神様も知らないので反応に困ってしまった。ベンチで備え付けのフルーツや肉をかじっている仲間達に話を振ってみる。


「破壊神メスは本で読んだ事があります。何かあると下界に降りてきて好き勝手に破壊し始めるから、機嫌を損ねぬようにお供え物をしましょう! みたいな迷信話でしたが、実在したんですね……」

「メスは有名人じゃの。我は何度か会ったことがあるぞ。敵対する立場じゃったけども、神通力みたいなやつを全く使わない、変な神じゃったの~」

「ぶおおおん……! パンの神様から、想像できないくらいにおいしそうな匂いがしまぁす!!」


 闘技場に上がってきたメスとパンヤは、それぞれ3人を伴っていた。全員が冗談かと思うくらいに筋肉ムキムキ。恐らくは戦士なのだろう。戦闘前のピリピリとした空気が伝わってくる。


『バトルの方式は基本1対1での戦いで、3人を倒して勝ち残った方は体力を回復し次の戦いに進めます! ただし、負けた戦士は、次の戦いに進むことが出来ませ~ん! 消耗した装備の復活もできません! ボトルモンスターは倒されても負け数になりませんが、同じく次の戦いに進めなくなりま~す!』


 先程のアナウンスさんが簡単にバトルの説明を始めている。これを喋っているアナウンスの人は一体どこにいるのだろう? と思って探すと、闘技場のすぐ横の特設ステージ的な場所に立っているバニーさんのようだ。もしや、兎の神様か?


『神王候補の代表者は直接戦闘に参加することは出来ませんが、ルール上の話で~す。神の力を使って応援したり、戦士たちを支援することは出来ま~す。具体的な支援内容はその神の力によって違ってきますが……まぁ、全ては本番まで内緒で~す!』

「ウサちゃんの言ってることは本当だけど、実際の戦いは見てもらったほうが早いわね。どんな形でも、どんなに卑怯でも、ルールを破ってでも、とにかく相手の戦士3人を敗北させれば良いのがこのバトル……」


 ヌガー様が珍しく真面目な顔で話しかけてきた。


 この人が真面目な顔なのって殆ど見たことがないのだが、こうして見ると、実はとても知的な容姿をしている事がわかる。時々見せるこの真面目な容姿が、もしかしたら彼女の本性なのかもしれない。


 だが、今日の服装も何処か様子がおかしい……。晴れ舞台だからなのか、いつもよりも格段におしゃれなのだが、チャックを下まで下ろせば、全部が簡単にぺろんと脱げてしまいそうな……。


 これは、今日も、やる気まんまんなのでは……?


『この闘技場内部でどのような攻撃を放とうとも、観客席に届くことはありませ~ん! ルールは色々ありますが、闘技場に上がった瞬間から、何をしてもオッケーです! 思う存分、やりたい放題に、最強必殺技や最終秘密奥義を放ちまくってくださ~い!』


 メスとパンヤの双方から互いに負けず劣らずな筋骨隆々の戦士一人ずつが前に出て、互いの筋肉を誇り合うような謎の構えを取り始めた。これはもしや、発達した筋肉を見せつけ合うマッスルなバトル?


『さあ、一回戦、既に始まっていますよっ!!』


 ウサちゃんの手が振り下ろされる。戦闘開始後は闘技場の音を拾うようになるらしく、筋骨隆々の戦士達の会話が聞こえてきた。


「フハハハッ! パンヤ様の元で毎日ひたすら延々とパンを作り続けることで、究極まで鍛え上げられたこの素晴らしき肉体! 貴様の貧相な筋肉で破ることが出来るかな?」


 ムキッ! ムキキッ! 全身の筋肉をぷりぷりと膨らませて、笑顔を浮かべるパンヤ側の筋肉。


 一方、メス側の筋肉は、背負っていた謎のリュックを地面に降ろし、手元のスイッチを押した。


「……む? 何だね、それは?」

「知らんのだ。何なんだろうか? メス様が、兎に角こうしろと……」


 次の瞬間、恐ろしい閃光を伴って、闘技場の上に太陽が出現し、全てを焼き尽くし始めた。


 どういう技術を使っているのか、ウサちゃんの言っていた通り小屋や観客席まで破壊は広がらないが、まだ一回戦の開始直後だというのに、目前の闘技場は目視することすら難しい灼熱地獄と化している。


 爆発に伴う轟音でほとんど何も聞こえず、強烈すぎる光で何も見ることが出来ない。


『こ、これは一体? 試合は、どうなってしまったのでしょう~!?』


 光が収まると、闘技場の上に現れた地獄の状況が明らかになった。


 豪華だった装飾は吹き飛び、瓦礫の山と化し、床材はドロドロに溶け、マグマのように赤く煮えたぎっている……。


 端の方には、バリアのような謎の光に包まれたメスとお供の戦士が二人。


 パンヤ側の代表や、戦士の姿は、広い闘技場の何処にもなかった。


「う、うわあ…… あ……は…… はっはっは! 我が陣営最新最強の戦略破壊兵器、メス爆弾の威力を見たか! こ、これぞ神王に相応しい力であるな!」


 メスが叫ぶが、想定外の威力でバリアで防ぎきれなかったのだろうか? 衣服や髪の毛が焼け焦げているし、明らかに目前の激しすぎる惨状に動揺している。


 残った戦士2名は顔面蒼白で震え上がっているが、彼らの背中にも同じ爆弾と思われるリュックが背負われている……。


 闘技場内に係員らしき者が立ち入り、何やら調べている。どうやら、パンヤチームが完全に消滅したことを確認しているらしい。


『こっ……これは凄い!? メスチームの戦士の捨て身の1撃で、なんと! パンヤチームの戦士3名及びパンの上級神パンヤを、同時にまとめて完全に葬り去りました~! こんな戦いは観たことがありません! いや、これは、戦いと呼べるものなのでしょうか~!? これは……破壊! まさにぶっ壊れアイドル! 流石は破壊の上級女神、圧倒的すぎる破壊で~す!!』


 一応、観客席から歓声が上がる。


 だが、その声は開始前のものより小さく、明らかに動揺が広がっていた。ざわつきの方が大きいかもしれない。


「なあ、今の攻撃って……アリなのかよ? あんなもん食らったら、誰だって死ぬぞ?」

「ヤバいでちね。初っ端からこんなにヤバいとは思いませんでちた……」

「ひっ、ひっ、ひええええ~っ!? 見たっ? 見たっ? あんなのありえなくない~~~?」


 流石に無効試合になるのではないだろうか? と、思ったのだが、闘技場は謎の力であっという間に完全に補修されて、二回戦が始まるようだ。

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