90 怪物少女と何でもない日常
大浴場に来ると、時々バトルを仕掛けてくる少年ボトルマスターが今日も懲りずにやってきたので、いつものように撃退しすぎて女子中学生化しない程度にほんのり倒した。
具体的には彼のモンスター、ジャイアントフンコロガシを捕まえて上下反転させて床に転がしただけであり、その後の展開もいつも通りである。
ぷりぷりの少年おけつをパーン!と叩きながらも、回数を重ねて流石に可哀想な気持ちになってきたのか、ファフニルが珍しく優しく諭しはじめた。
「俺、忠告したじゃん。おめえの怪物、ジャイアントフンコロガシじゃロクに戦えねえって……。それが何で、今日は2匹に増えてるんだ? もしかして、アホなの?」
今回もファフニルの風呂椅子にされて、お尻をパンパン叩かれている少年ボトルマスターは、恥ずかしいのか嬉しいのか、お顔が真っ赤だ。
よく見ると、少年の表情も、あれは嫌がっているというよりも……?
「う、うるさい! 変態モンスターのくせに生意気だぞ! フンコ達はな、絶対に強い筈なんだ!! 記念すべき初勝利をお前たちから奪い取ってやるんだァ!!」
「何回言っても分からない小僧だなぁ、おい? 風呂の椅子は喋らねえし、ちんぽこ立てたりしないんだよ!」
少年よりも幼い女子に、先程よりも若干強めにスパーン!スパーン!とお尻を叩かれる度、赤面した顔を嬉しそうに歪め、ン゛ッウウウウーッ♡♡♡ と、迫りくる快楽を我慢している風の少年。よく見ると……よだれをたらしている……。
……なんか、回を増すごとに段々いけないプレイ感が高まっていて、少し心配になってくる。なんか、たまに見える男児ちんぽことか、男児のくせにほぼ大人状態だし。
罰ゲームなのかご褒美なのか最早さっぱりわからない風呂椅子の刑に処され終えた少年は、以前はすぐに逃げてしまっていたのに、最近は俺達と一緒に風呂に入ってから去るようになっていた。
「変態マスターの兄ちゃん、噂に聞いたんだが、最近このホテルに訳の分からない事を口にしながら全裸で踊り狂って走り回る変態痴女が現れるらしいぞ。もしかして、変態の仲間なんじゃねえの~?」
「うほっ、変……態♡」
「ぶおおおん……♡♡♡ 変態でぇす……♡♡♡」
「俺からすると、うんこを転がす昆虫を仲間にして、女児にパンパン尻を叩かれて喜んでるお前も、相当重症な変態に見えるんだけどなあ」
「な、な、なんだとぉぉぉおおおおっ!!!?」
勢いで立ち上がる少年マスターだが、その表情は若干の悦びを感じさせるもので、息遣いが荒く、両手で隠してはいる股間の突起もいまだにギンギンに立ち上がっており、手の間から先端が露出していた。
子供は、元気だな……。それと、その変態痴女は仲間ではないが、まぁ、確かに変態の知り合いではある。
「なんだ? まだ、叩かれ足りないのか? ほら、お尻出しな!」
ファフニルも立ち上がって、湯煙の中男児に近づいていく。ファフニルの裸体が目に入ったのか、素っ頓狂な叫び声を上げた少年は、股間を抑えながら風呂から飛び出て逃げていった。
このホテルは相変わらず本当に居心地が良く、不満なんてまるで無かった。トンタマ暮らしをした直後などは、その様々な応対の素晴らしさに思わず涙しそうになってしまったくらいだ。
しかし、先日からヌガー様が何度も俺を狙って繰り返し引き起こしている全裸変態騒動のせいで、なんとなくホテル側から疑いの目を向けられているような気がする。
何しろ、全裸様の出現した場所には、大抵俺が居るのだから……。
さっきの少年マスターが性に目覚めてしまいそうになっている、というか恐らくもう目覚めているのも気になるし、ここでの暮らしはそろそろ潮時なのかもしれない。
俺は、とりあえず風呂場の皆に相談を持ち掛けてみた。皆は家を持つ事に特に反対しておらず、割とノリノリだった。
「狭くても良いから、個室が欲しいかもんんっ♡ なんか時々寝ぼけて、火を噴きそうにんんんっ♡♡ お♡ お♡ おっ……♡」
俺と洗いっこしながらトロトロ顔で語るファフニルの要望は周囲を気遣うものだった。だけどそれって何にしても火事になっちゃうんじゃ…? 火事になっても良いように、庭に離れを作るとかで良いだろうか? 石造りの小屋にすれば簡単には燃えない気もする。
「あたちは、この電気風呂の刺激さえあれば、どこでもOKでちぃぃ……♡ イ、イ、イイッ♡」
電気風呂に当たりながら、ルアが瞳にハートマークを浮かべて気持ちよさそうな声を上げた。俺は電気風呂って痛いだけだと思うんだけど……。これは庭に温泉を引いて電気を流す感じで実現できる気がする。
「機関車との暮らしを、諦めたりなんかしない……よ。まずは線路を……引く!」
「気長に探せば結構見つかるもんじゃからな。まずは線路なのは当然じゃけども」
風呂にまで機関車の模型を持ち込み、共に湯に浸かるアオリと姫の要望は、要するに線路を引ける庭があれば良いという事だろうか? なんか、庭があれば良いっていう話ばかりのような気がしてきた。
「あのぉ、雌豚は、もっと豚舎みたいな所で、のびのび暮らしたい気持ちがありまぁす!」
チャーミーが希望する豚舎は、自分専用の豚舎が欲しいという事なのだろうか? もしかしたら一番訳が分からない話かもしれない。これも、庭があれば解決できるか。庭って最強なんじゃないのだろうか?
「私は、趣味の園芸が出来る場所があれば、嬉しいです!」
キリコ故に、薬草とか毒草とか忍術っぽいあれこれを作るんだろうか? まぁ、これも多分庭があれば良いのだろう。もはや完全に庭さまさまである。
「なるほど分かった。要するに全て広い庭があれば解決する話だな。レム姉さんも庭さえあれば良いに決まってるし」
「ふぁっ!? 待ってください、私は庭なんて……庭があれば、バーベキュー出来ますかね?」
問題はそれを作る場所の確保だったのだが、姫が解決した。
「我の屋敷があった場所、あそこに家を建てれば良かろう? 今なら、土地を安く売るぞ?」
あっという間に話が進み、俺は広大な土地を手に入れてしまう事になった。




