09 五人の少女と朝ごはん
「ははっ……こうやって見ていると、本当にファンタジー小説の世界に来ちゃった感じがするな……」
謎の麻薬によって見せられている幻惑のファンタジー世界の出来の良さに感心しながら歩いていると、この街が思った以上に大きく発展している事がわかる。早朝から様々な店が開いているのは生活様式の違いだろうか?
必要そうな品物、調理道具や調味料、保存が効きそうな水や食料を買い込み、昨日見つけて買っておいた魔法の保存袋とやらにどんどん突っ込んでいった。
賞味期限が無くなり重さを感じなくなる魔法の保存袋とか、一体どんな幻覚なのだろうか……?
街中の装飾品や人々の暮らしの幻覚のあまりの出来の良さに少し感心しながら歩みを進めると、街のはずれまで到着してしまった。
「鳥馬~ん! レンタル鳥馬はいかがかな~ぁ? 何日乗っても大丈夫! 乗り捨てても勝手に戻るし大丈夫! 便利便利な鳥馬だよ~ぃ」
幻覚のせいなのか、ものすごくファイナルでファンタジーっぽい生き物をレンタルしているお店を発見してしまい、つい、勢いでレンタルしてみる。
鳥馬は大人しく、簡単に乗ることが出来た。扱いについての注意点を聞いてから、街の外に繰り出してみた。
街の外は荒野が広がっていて、たまに木が密集したオアシスのような場所があるが、どちらに進んだら良いのか良くわからず、街が目にはいる範疇でなければ怖くて移動できない……。
「ふああ……おはようさん、なあマスター、念のため聞くけどよ、俺達に朝飯は無いのか?」
モンスターボトルの中から1号の声がするので、先程注意されたように、鳥馬の手綱をしっかりした木と縄で結び付けて固定した。こうしておけば、勝手に町まで帰還したりしないらしい。
「朝食だな。携帯用キッチンを出して今から作るから、適当にボトルから出てきてくれ」
出てきた5人に食卓の準備を指示し、食器を渡す。今朝のメニューは、白米に削り節をかけ、ハム卵焼きを乗せて出汁醤油をかけた物と、海苔の味噌汁。後は簡単なサラダにした。飲み物としてりんごジュースも出した。お好みで食べられるように、梅干と佃煮も用意。
ほとんどの品は先程買ったばかりの総菜だが、思った以上にうまそうだ。
はい、みんな揃って、いただきま~す!
「なんだよ……贅沢じゃねえか。うめえうめえ。ボトルの中だと簡単な固形食が出てくるんだけどよ、あれマズいからな」
「おいちぃ……! おいちぃ…! 昨日の食事もすごかったけど、もしかして……毎日こういうのが食べれらるんでちゅか?」
「マスター、これは凄いです……ね。凄すぎて、豚の頭がダメになってしま……う」
「ぶひょおおおっ!? ブヒッ! ブヒイイイン!! ブホオッ!!! ブオオン!! ブオオオオン!!!」
「ああっ、心に沁みます……とても良い家庭料理ですね!」
「ご飯はいいですね。塩分過多が気になりますが、美味しいでーす!」
5人のお腹がいっぱいになった所で、お姉さんを置いていった事を切り出した。ポカーンとする5人と1人。5人が一斉に1人を指さすと、1人が両手で自分を指さして胸を張った。
そう、置いていった筈のお姉さんは、いつのまにか食卓に座って、一緒に朝食を食べていたのだ……。
「私、居ますから! 割とおいしい朝食も頂いてます! ごちそうさまでした!」
こ、これは、一体どういう事なのだろうか? 俺は確実にお姉さんを宿に置き去りにした筈だが…。
「私は転生の女神なんですよ。貴方が何処へ逃げても、スパッと女神の力を使えば、一瞬で追いつけるんです!」