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もんもんモンスター  作者: 猪八豚
大怪物屋敷
89/150

89 怪物少女と、変態よおおおお~~~っ!!

 ミドルスコールの夜は街の明かりが消えず、昼間よりも煌びやかに感じる。


 都会なのにむしろ幻想的とも言える光景を窓の外に感じながら、冷蔵庫から取り出した飲み物を口にした。


 田舎では飲みたくても飲めない、爽やかなシュワシュワを感じさせてくれる清涼飲料水だ。これが喉を伝っていく感覚だけで、昼間の疲れが癒される感じがする。


 何故かついこの間まで、街からは我々の敵が殆ど居なくなったのだが、最近また増え始めているらしく、急遽、地方から剣士を呼び寄せている。僕もその一人だ。


 僕が出張でこのホテルに泊まるのは2回目だが、これ以上ない程の完璧なサービスが整えられていて、来てよかったな……次もまた泊まりたい、という感情を強めてくれる。


 そんな事を思っていると、突然、廊下から叫び声が聞こえた。


「へっ……変態よおおおおおおおお~~~~~~~~~~~っ!!!!!」


 こんなに感じの良いホテルなのに、変態が出現するのか? ヒステリーを起こした者の虚構の叫びかもしれない。とにかく、廊下に出て確認してみる事にした。


 廊下に出た僕の目前で展開されていたのは、泣き顔のメイドさんに守られた二人の子供と、それに向かって激しく怪しげな動きで迫り寄る、謎の光でライトアップされた完全に全裸の女性という光景だった。


「待ってぇ♡♡♡ 待ってえええぇ~ん♡♡♡」

「嫌っ!! 変態!! 変態よお~~~~~~~っ!!」


 泣き叫ぶメイドさんに抱きしめられる子供達。これは……誰がどう見ても露出狂による変態犯罪! それも、我々が日夜追い続けている変態ボトルマスター達が謎の情動によって引き起こす、本当にロクでもない変態犯罪によくある無差別露出だ。


「お金ならあるのよおっ♡♡♡ お金ならあげるからあああっ♡♡♡」

「助けて~っ!! く、く、狂ってる~~~っ!!」


 僕は腰のベルトに手をやって、武装の封印を解く。


 我々の標準装備である一刀両断剣を取り出して掴み取り、裸の女に指を向けた。おじさんではなく若い女なのが気になるが、こんな変態犯罪を犯すのは変態ボトルマスターに違いない。


「そこの変態っ!! 一般市民に対して変態犯罪を犯したボトルマスターのボトルは、即破壊である!!」

「んっひいいい~ん♡♡♡ しゅごいっ♡♡♡ 過去最高記録、更新しまくりいい~~っ♡♡♡」


 全く話が通じない変態犯罪者は完全全裸に見える。だが、この淫猥で怪しげな所業は人類の力ではありえない。何処かにモンスターボトルを隠し持って、何らかの手段で自身を操作しているに違いないのだ!


「駄目っ駄目っ馬鹿になっちゃう~っ! んお゛お゛お゛~っ♡♡♡」

「くっ! 貴様の正体、見破ってやる!」


 しかし、激しく踊りくねる裸体のどこにもモンスターボトルは見当たらない。それどころか、どう見たって隙だらけに見えるのに、何故か切りかかる隙が存在しないように感じる。もしやこれは、時折出現するというアレなのでは……?


「という事は? ま、まさか……」


 ボトルマスター達が行う奇行についての知識が詰まった脳から、とある結論を導き出した僕の視線は、変態犯罪者の剥き出しの股間に向いた。


 これまで結構な件数、破壊から守る為なのか、それとも快楽を得る為なのか、股間にモンスターボトルをずっぷり収めていた変態ボトルマスターの討伐記録が残っているのだ。


「破廉恥極まりない最低最悪の変態め……!! そんな異常な姿を子供たちに見せて、何が楽しい!?」

「でもよ、偉いらしいんだぜ、その全裸ビッチ……」

「実は全裸様は……」


 少年少女の口が開くが、子供の言う事を聞いている場合ではない。


「君たちは避難してください。この異常変態女は、僕が排除します!」

「わ、私は、他の者を呼んできます!!」


 隙は無いが、とにかく一刀両断剣の鞘で殴りつけ、変態の気絶を狙った。だが、頭に当たった筈の鞘から手を通じて帰ってきた感触は、訓練で散々叩いた砂袋の人形や、これまで葬ってきた変態ボトルマスターおじさん達とは違い、言葉に表せない得体のしれない不気味な何かだった。


 変態女の顔には歓喜の笑顔が浮かんでいる。鞘での攻撃は、全く通用していない……!


「ふおお……みんなもっともっと見てぇ~~~っ♡♡♡ 私、謎の男に襲撃されているのっ!! 今なんて、男の長くて太くて固~い棒で殴られちゃったのよ! え~ん、え~ん、生放送始まって以来の大ピンチ~!! バンバン見てぇ~~~っ♡♡♡ 宜しければ、チャンネル登録お願いしま~~す♡♡♡」


 訳の分からないことを叫ぶ変態女の理解不能な動作が更に奇怪な物に変わり、突撃の相手が女子供から僕に切り替わった。


 ……こうなったら、もう、仕方がない。僕は一刀両断剣を変態女に向けようとして、躊躇してしまう。


 一刀両断剣によるボトルマスターへの直接処罰は経験が無いのだ。それは法的に許容されている。足りないのは、僕自身の覚悟だけだ。


「あっ!? いけな~い! もう寝なくちゃいけない時間だから一旦帰るけど、私、諦めてないから! また来るからね! 皆さん、ご視聴ありがとうございました~!」


 何かを主張した後に突然光り出した空間に身を投げ、奇妙な閃光に包まれて、あっという間に変態女は消えてしまった。今の技術は、一体何だ……?


 変態女が居なくなった途端、突然、全身から汗が噴き出て、足腰が重くまともに動けなくなり、もの凄い疲れを感じてしまう。僕は、一体何を相手にしていたのだ……?


 無理をして女が消えた辺りを調べてみたが、何の痕跡も残っていない。気が付けば、変態の犯罪に巻き込まれ心に傷を負っていたであろう可哀想な少年少女も避難したのか居なくなっており、メイドさんが連れてきた屈強な剣士たちに、どんな顔をして良いのか分からなくなってしまっていた。

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