08 五人の少女と幻覚洗脳世界
「うるさい、メス堕ちビッチ! 関係ないビッチは何処かにラブでも探しに行けっ!」
1号の割と親切な暴言と共に飛び出した女児キックが、女子中学生の腹にポスッ!と当たる。靴に付いた泥が女子中学生の制服を軽く汚してしまうが、ほぼノーダメージだ。
「えっ!? 何よこの子!? やだもう、制服、洗わないとじゃない……?」
ふらふらと何処かに去っていく女子中学生。半裸おじさんは、あの女子中学生の体のまま甘酸っぱい女子中学生青春ラブストーリーを展開していくとでもいうのだろうか……?
「女子中学生になりたくなければ、ボトルマスターとのバトルには必ず勝つか、バトル自体を避ければいいのです。バトルしない事での罰則はありませんから。ただし、そうするとボトルマスターとしての報酬は受け取ることが出来なくなりますが……」
お姉さんの説明を聞き、先程の半裸おじさんが変化した女子中学生姿を見た俺は、確信した……なんと恐ろしい知能犯罪者だ。このお姉さんは、何らかの手段で強烈な麻薬を俺に投与し、あやしげな幻覚を見せて、思いのまま操ろうとしている……。
残念な事に、今の俺にはそれに抗う術がない。かわいそうな誘拐の被害者である5人がペットボトルの中へ自由に出入り出来る事にも驚いた。中には個室があって、水回りも完備され、共用の衣装ケースには色々な服が詰まっており、何気にのんびりできるらしい。
一体どんな異常な麻薬を使われたら、そこまで恐ろしい幻覚を見せられてしまうのだ……?
黒幕はヤバい思想のオカルトな新興宗教団体……ってとこか……? くっ、なんて酷い……! 一体何が目的なんだっ……!?
気が付けば夜になろうとしていたので、偽物のお金を使う事に抵抗はあるが、作り出したお金で部屋を借りる。俺とお姉さんの分だけで良い。子供二人での宿泊なんて無理ではないかと思ったが、この世界ではお金さえ払えれば特に問題が無いらしい。
商店で色々と生活用品を買い込み、夕食は宿の外の大衆食堂で7人揃って食べた。味は絶品だった。特に魚料理が素晴らしく驚くほどジューシーな味わいと鼻腔を支配する香ばしさで、あたりに豚の喜びの鳴き声が響き渡る。
寝る前になって、俺は覚悟を決めて、お姉さんに真顔で話しかけた。
「どのような宗教かは知りませんが、神様はこのような罪を許さないのではないでしょうか?よければ明日、警察に自首しませんか?」
ポカーンと口を開けたまま固まったお姉さんが、正気を取り戻して大慌てで返答しはじめる。
「……ま、ま、待ってください! 待ってください! この期に及んでまだそんな事を考えていたんですか!? 嘘でしょう!? はっ…… もしかして貴方、麻薬で何かの幻覚を見せられてる…… とか考えてませんか!?」
宗教お姉さんは自首する気は無いらしい。俺は、この怪しげな幻覚を見せられたまま暮らさねばならないのだろうか…?
「いいですか。あなたは、経緯はどうあれ、もう既にボトルマスターなのです。他のボトルマスターを倒し、経験値を得てレベルアップし、報酬を得て……」
洗脳の為の小言を聞き流して寝た翌日。俺は朝早くにお姉さんを置いたまま宿を離れた。お姉さんから離れれば、麻薬を投与される事も無くなって、そのうち正気に戻れるだろうという判断からの行動だ。
とりあえず、警察を探す。早いうちに通報できれば、パトカーがあの宿に向かってくれるはずだ。しかし、街中には警察らしき組織は見当たらなかった。
その代わりに、鎧を着込んで大きな剣を下げた騎士のような人間が闊歩している……。




