07 五人の少女と可憐な女子中学生
「なんだこの変なネズミ? 戦ってもいいの?」
戦闘を許可すると、ウキウキ顔で前に出る1号。
ジャガリアンハムスターは必死の形相でひまわりの種を投げてくるが、1号には全く通用しない。通用しないというか、ネズミとかハムスターにひまわりの種を投げつけられてダメージが通ってしまう人って存在しないのではないだろうか……?
「ジャ、ジャガッ……ジャガアアアアッ!!!」
続けてジャガリアンハムスターが素早い動きで接近し、割とものすごい速度のパンチを連続で放つ。だが、何発当たっても1号には全く通用しない。体の大きさが違いすぎるのだ……。
「なんだよ、残念だな……ふーっ!!」
1号が軽く息を噴き出すと、口元から恐ろしい勢いの炎が噴き出され、一瞬でジャガリアンハムスターが炎に包まれる。炎の発する光が強く、周囲が暗くなってしまったかのように感じてしまう中、ジャガリアンハムスターの身体だけがしっかり認識できる。
「ジャッ……ジャガイモォォオオンッ!!!」
断末魔の叫びをあげるジャガリアンハムスター。もうもうと立ち上った煙が消え去った後に残ったのは、表面がこんがりとおいしそうに焼けたジャガイモだけだった。
「ぶおお~ん!……おいしそうでぇす♡♡♡ ブゥ、ブゥ、いただきま~す!!!」
即座に四つん這いで駆け寄って、何処かから取り出したバターを塗って、笑顔でお口にジャガイモを放り込む4号。とても美味しそうな顔をしているが、あれは一応ハムスターなのではないのだろうか?
そんな事を思っていると、頭の中で声がした。
(ふむ、汝のレベルが上がったぞ。ステータスを確認するがよい……)
「そ、そんな! オラの大切な種イモから生まれた奇跡のモンスター、ジャガリアンハムスターが……!? くそっ、これで4連敗だべ……」
何だかよくわからない解説を喋りながら膝から崩れ落ちる半裸おじさんのモンスターボトルに、突然、細かいヒビが入ったかと思うと、パン!と音を立てて砕け散り、キラキラの粒が空気中に漂っている。
(お、おい……汝、我ら力の結晶の声に耳を傾ける気は無いのか……?)
「ボトルマスター同士のバトルに負け続けると、一定確率でモンスターボトルが破損します。そうなったら契約モンスターは再び牢屋に飛ばされ、負けたマスターは…」
半裸おじさんの体にまとわりつく、砕け散ったボトルのキラキラの粒。粒がとりつくたびに、半裸おじさんが謎の輝きに包まれていく……。
「嫌だっ! オラ、なりたくねえ! オラはまだ戦えるうっ……! オラは……あ、あああ~ん!!」
激しい閃光が半裸おじさんを包み込んだかと思うと、すぐに消えた。後に残されていたのは、中学生くらいの女子だ。セーラー服を身に纏い、学生カバンを背負っている。
「あれっ? 私は……誰? ここは何処……?」
まだあどけない子供のような表情で、周囲をきょろきょろと見渡す、とびっきりの女子中学生。
「負けたマスターは例外なく全ての記憶を消去され、身体を構成している素材を流用し、今度こそ本当の異世界転生……記憶喪失状態の女子中学生に完全変化! それぞれの甘酸っぱい物語を紡いでいくのです!!」
どうです? いいお話でしょう! と胸を張るお姉さん。
「ちょっと待ってくれ、女子中学生なのは何故だ? 俺は女子中学生の事は嫌いではないが、半裸のおじさんが原材料の女子中学生って、それは女子中学生じゃないんじゃないか? 女子中学生は、もっと、こう……清らかで……半裸のおじさんが原材料なんかじゃない素晴らしい存在な筈なのに……!!」
あまりの事に突っ込みを入れてしまうが、突っ込みの内容が最低である。
「あの、すいません。ここは何処でしょうか? 私の事、ご存じではないでしょうか?」
俺達に話しかけてきた女子中学生は、とても清楚で可愛らしく、まるでライトノベルのヒロインのようなオーラを醸し出している。ついうっかり恋してしまっても不思議ではないくらいの美少女だ……。
先程の半裸おじさんが原材料だと知らなければ、素晴らしく可憐で清い女子中学生なのに……!