65 0人の少女と豚一頭、トンタマでの苦悶(ルア&6号)
二人の女はルアと6号だ。ルアは割と特徴的な髪の毛が目立ち、雷模様の下着を身に付けているので、すぐにわかった。6号は、出会った時の大人形態と、仲間になってからの女児形態の差が、身長くらいしか無い。
問題は、二人の服装だ。レザーベルトで各部を締め上げ、身体のラインを強調し、ムチムチした肉を見せつける為の真っ黒なコスチューム……そう、完全に女王様である。
二人の目を隠しているマスクには立派な角が付いている。このアイマスクってSM以外で使われることがあるんだろうか……?
「マスター、自分でも良くわからないんでちが、マスターの両お乳首に、死ぬまで最大出力の電撃を通したくて通したくて仕方が無いのでち……!」
「不束者ですが、死ぬまで血を飲ませていただき、マスターのお命を支配させていただきます……!」
二人のお尻にも洗脳魔道具が張り付き、虹色の光を放っている。残念な事に、この二人も洗脳されているようだ。女王様装備なのは二人の根っこが女王様だという事なのだろうか?俺は何らかの変態呼ばわりされて、鞭で叩かれてしまうのだろうか?くう~っ!!
一人ずつでも辛かったのに、二人同時に相手にするだなんて、俺やこの装備に可能なのだろうか?スーパー・マシン・パンチはチャージに時間がかかるし、イナズマ・マシン・キックは使用不能状態。ホーミング・マシン・ミサイルは残弾数が2発しかない。他にも技は残っているのだが、毒ガス散布などの使用を躊躇うものばかりだ。
とにかく、あの尻を攻撃しなければ……!
「ちょっとちょっと、その恰好って事はもしかして、女王様による生調教の生放送が実現してしまうんじゃないかしら?そんなの大反響に決まってるじゃないっ!ふあああっ!!広告収入の嵐が止まらないよ~~~っ♡♡♡」
肌色面積が多すぎる恰好で瞳にお金マークを浮かべて大喜びするヌガー様の横から、満面の笑みを浮かべて強烈な叫び声を放ちながら、フィレが走り出した。
「んぶあああああああああああああああっ♡♡♡ 6号様あああああっ♡♡♡ 6号様あああああ~~~んっ♡♡♡ご復活っ!!ご復活うううううう~~~~っ!!!」
「えっ……あ、あああっ!?フィレ……!? くっ、跪きなさい!」
パーンッ!
「おっ、んおおっ……ブヒイイイイイ~~~~ンッ♡♡♡」
手に持った女王鞭でフィレに一撃を加え、言う事を聞かせようとする6号。しかし、強くなった6号の鞭の一撃は、フィレの命を奪うのに十分すぎる攻撃力を持っていたのだ……。
全身から謎の汁を垂れ流し、幸福の絶頂の表情を浮かべながら痙攣し、すぐに動かなくなってしまったフィレを見下ろして、困惑の表情を浮かべる6号。周囲の皆の顔を見て、助けを求めているような印象を受ける。女王様に助けを求められても困るのだが……。
「ぶおおおおんっ!!!6号様あああ~ん♡♡♡ 6号様あああ~ん♡♡♡」
部屋のドアがバーンと開き、新しいフィレが6号に向かって両手を広げて突進していく。
「ひええっ!?ちょっと!?今、目の前でっ!?」
両手でフィレの突撃を防ごうとする6号。その両手に込められた吸血鬼の強大な力によって、フィレの首の骨は簡単に折れてしまい、2体目のフィレの幸せそうな顔の遺体が床に転がることになった。
「6号、女王様とは言っても殺人は犯罪でち。マスターを始末したら、償わなければ……」
「ふぁっ!?私、こんなつもりじゃ……違うんです、私はマスターの血を吸いに来ただけでぇ……」
泣き顔で言い訳を始める6号の口が閉じきらぬ前に、再びドアがバーンと開き、新しいフィレが突撃してきた。今度は下手に触らないよう必死の顔で避ける6号だったが、瓦礫に躓いて転んで頭を打ったフィレは3体目の遺体となってしまった。
フィレは現在も不滅だとは聞いていたが、こんな復活の仕方をするのか……。前の死体、消えないんだな……。
数十体目くらいのフィレが自分の死体達に囲まれながら、完全無抵抗の6号にがっしりしがみついて満足そうな顔で全身を舐めまわしている。フィレの唾液が大量にかかった洗脳魔道具はショートでもしたのか煙を上げてポトリと床に転がり、虹色の光は消え失せてしまっていた。
「マ、マスター、わたし、とんでもない事を……マスターに申し訳ないのもあるんですが、あの、わたし、この生活に耐えられるんでしょうか?マスター……」
「ああ、大丈夫だ。俺が知っている限り、どんな生活だって、必ず慣れるもんだ!」
豚人間女児に毎日全身をぺろぺろ舐められ続けた経験なんて俺にはないが、今回も自信満々スキルが唸りを上げた。このスキル便利すぎるんじゃないの?
ルアは床に落ちた洗脳魔道具を観察し、自分の尻に付いた同じものを見て考え込んだ後、俺に向かって言った。
「うーん、変だなとは思っていまちたが……マスター、あたちたちは何者かに洗脳されているかもしれないでち」
「ああ、そうだ。尻についているそれが外れれば、洗脳が解けるんだが……」
口元に微笑みを浮かべながら、ルアが続ける。
「ところで、マスターはあたちのステータスを知っている筈でちゅが、あたちはそんなに強くないモンスターでち。この程度なら……はぁ、はぁ、マスターなら大丈夫なはずなんでち!!」
ルアが俺に向かって両手を突き出し突撃してきた。確かにそんなに早くないし、これならば生身の俺でも勝ててしまうかもしれない。だが、彼女の両手には濃厚な電撃の稲光が迸っていた。
「はぁ、はぁ、大丈夫でちゅ!大丈夫でちゅから、両乳首に電撃を流させてほちい!!!マスターなら大丈夫な筈なんでちゅ!!!」
「大丈夫じゃないよ!死ぬよ!」
部屋をぐるぐる逃げ回る間にチャージ完了したスーパー・マシン・パンチをルアの尻に叩き込み、装置を破壊した。
「ああ……マスター、ごめんなさい……でも、乳首に電気を流したいのは本心からでち……」
「私も、マスターの血をちょっと飲みたかったのは本心からで……」
動かなくなった体でとんでもないことを口走り始める二人を抱え起こして、両手を使って二つの頭をなでてやった。
「お前たちは悪くないよ。いや……乳首に電流を流したいっていうのは良くない……むしろ悪いことかもしれないけど……それに、血を飲みたいっていうのも冷静になってみると決して良い事ではないよね……」
「マスターなら、洗脳魔道具の破壊をやってくれるって信じてまちた。自分では手出しが出来ないみたいだったんでちゅ」
「私もマスターの事信じてたんですけど、なんだろう……なんで私、こんな事になって……?」
「ぶおおおおっ……♡♡♡ ぶおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~んっ……♡♡♡」
今回は唇を奪われなかったが、両ほっぺに二人から頬ずりを受けてしまった。当然のようにヌガー様の診断で動物病院送りなので、光に包まれ始める二人。フィレは6号の足にしがみ付いて離れないので、そのまま病院に同行するようだ。
そして、再び異様な破壊音が鳴り響く。空間のヒビが大きく広がり、開いた穴から顔を出した女。端整な顔つきにバランスよく整った美しい肉体なのに、そこに込められた圧倒的な暴力と、乱暴な口調。それら全てが俺に向けられている。転生部屋で見た彼女の顔は、今でも忘れることが出来ない。
「……ファフニル」
「よぉ、マスター。妙ちくりんな格好してんな?まぁ、何だ……死ぬときってのは、そんな感じなのかもしれねえけどよ」




