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もんもんモンスター  作者: 猪八豚
大怪物旅行
63/150

63 0人の少女と豚一頭、トンタマでの激戦(キリコ)

 キリコは目立たず特徴も余りない子だ。彼女の事をあまり良く知らない人からすると、言う事を良く聞く大人しい良い子だと思うだろう。しかし、俺は彼女の内面を割と理解してしまっている。


 ひょっとこのお面を外すキリコ。下から出てきたのは、女児化していた時とほとんど変わらない、情けなく助けを求めてくるときのキリコの顔だ。


「ねえ、マスター……私、おかしくなっちゃったんでしょうか?足が震えて動けません……!」

「いや、まぁ……お前は昔から普通ではないけどな」


 彼女の得意とするスキルは透明化だ。ただ、見えなくなるだけで、ボトルマスターの俺には気配などが感じとれる。皆で行動している時などに、急に居なくなったキリコの居所を感じてみると、俺のすぐ横に居たりしていた。


 風呂に入っている時などは要注意だ。目の前でじっと俺の股間を眺めていたり、脱衣場で俺の下着をなでていたりしたのだ。


 知らんぷりを決め込んでいたが、彼女はやりたい事を我慢せず、透明になって隠れて行うタイプ。決して都合の良い良い子ちゃんなんかではないのだ。


「マスターさん、キリコさんのお尻にもぉ……」

「ああ、解ってる。彼女の今の態度も、全ては演技だろうな」


 床に座り込んで待つキリコは、俺が近づいてこないのを確認すると、情けない表情を一変させ、スッ……と無表情に戻り、ひょっとこのお面を付けた。


「マスターは、私を助けてくれないんですか?」


 キリコのスキルは透明化だけではない。レッツ・ダンシングという凶悪な不可避スキルを習得している。葉隠流暗殺術というのがどの程度致命的な技なのかも良くわからない。


「キリコ、俺は、お前を助けたいよ。信じてくれるか?」

「はい、私はマスターの事をいつだって信じています」


 その場で、透明化の構えをとりはじめるキリコ。


「私に騙されてくれる事、素直に殺されてくれる事……大好きなマスターの事、全て信じています」

「俺も信じているよ。キリコが、そのお尻のヤバい吸血虫なんかには負けないって事を」


 俺の言葉に首をひねり、ひょっとこのお面を外して自分の尻を見つめるキリコ。当然のようにタンザナイトの洗脳魔道具が、けばけばしい虹色の光を発しながらお尻にへばりついている。


「えっ!?何これ!?吸血虫なの!?ちょっとマスター、嫌ですよ!気持ち悪いっ~!!」


 顔色の悪くなったキリコがお尻を俺に向けながら焦っている。俺はスキルを全開にして堂々と嘘をついた。


「それはお前を吸い殺そうとしている吸血虫だ。今のままじゃ脳まで触手が伸びてぐちゅぐちゅにかき回されて死ぬが、何か考えがあって付けたままにしているのだろう?」

「知らないですよこんなの!このっ!!離れろっ!!離れろーっ!!」


 必死にお尻に攻撃しようとしているキリコだが、そういう事は出来ないようになっているらしく、洗脳魔道具に攻撃が当たることは無かった。


「マスターッ!!お願いします~っ!!私のお尻に……一発凄いのをお見舞いしてください~っ!!」


 俺に向かって尻を突き出した逆土下座ポーズを取るキリコ。大人に戻っている上に殆ど裸のような恰好なので、色々と教育上マズいものが完全に見えてしまっている。


 まぁ十中八九が罠なのだろうが、もしかしたら本気かもしれない。俺は必殺技の発動準備をした。


「ぶおおおんっ……!!こんなエッチな暗殺術が存在するだなんて、世界は広いでぇす!!」

「ちょっと!それはやりすぎ!NGよ!余りにも劣情を煽るような映像は生放送だろうともカットされてしまうの!そんな事になったら、がっぽがっぽの広告収入が止まってしまうでしょう!?」


 ぷんぷんと怒りながらも自身のセクシーポーズはキメ続けているヌガー様の声を浴びながら、俺はイナズマ・マシン・キックを放つ。


 俺の足に装着された装備はキリコの尻の洗脳魔道具を蹴り壊したように感じた……が、実際の俺の足が蹴っていた物は、木の切り株だった。


「変わり身の術っ!!」


 イナズマ・マシン・キックの破壊力で粉々に粉砕される切り株のすぐ横には、手に持った刃物を俺に振り下ろそうとして、キックの圧倒的破壊力に戸惑い攻撃が遅れ、それでも俺の足に何度も攻撃を加えたキリコの姿があった。


 大体は予測していた通りの展開だ。キックを放つ前に俺があらかじめ配置しておいたホーミング・マシン・ミサイルは、本物のキリコの尻に命中し、洗脳魔道具が粉々に砕けて光になって散った。


 装備からの警告が俺の脳内で再生される。通常行動は可能だが、配管の破損があり危険な為、今後はイナズマ・マシン・キックは使用不能との事。フィレに治してもらえるだろうか……?


 崩れ落ちたキリコを抱き上げる。やはり体はろくに動かず、目もまともに開かない。様子を見たはだかんぼう寸前のヌガー様が動物病院行きを宣言した。


「キリコ、凄いじゃないか。今の技は一体何だ?」

「……マ、マスター、ごめんなさい! 私、どうしてあんなひどい事を……? ごめんなさい! ごめんなさいっ!」 


 閉じた瞳から大粒の涙が溢れて止まらない。手で拭ってやると、ぎこちなくその手に頬ずりしてくる。


「必ず全快して戻り、わが身わが心の全てをかけ、お仕え致します……!」


 そう言いながら、小声で何かを喋り始めるキリコ。声を出すのも辛いのだろうか?


 声を聞こうと顔を近づけると、ふわっ、と暖かいものが唇に触れた。


 俺の唇は、再び奪われてしまった……。


 真っ赤な顔になったキリコが光に包まれて天に運ばれていく。


「アオリさんもこの光で運ばれていきましたけどぉ、ヌガー様の言う動物病院って、天界にあるのですか?」

「あるわよぉ?神様基準だと人間も獣人もモンスターも全部動物だから、動物病院行き!!」


 ウヘヘヘヘ!という顔で札束を数える手を止めないヌガー様。


 俺はフィレに装備の修理を依頼しようと思ったのだが、またしても異様な破壊音が鳴り響いた。


 ギギギギンッ!!


 再び空間がガラスのように割れ、内側から押し開かれた異空間から、もの凄く大きな乳房を揺らしながら、一人の女が飛び出してきた。特徴的な言葉使いにピンク色の髪の毛。


「ぶおおお~ん?やっと、出られましたぁ!」

「どこからどう見てもチャーミーだ。すぐに開放してやるからな……!」


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