06 五人の少女と謎のおじさん
3号の口からぴゅっぴゅと噴き出していた墨が止まり、地面に書かれた文字列を読んだ皆の目が、何故か俺を哀れんだような感じに変わっている。
「これは、強くないので……は?」
「お金生成は激レアで相当便利なスキルでち……でも、それ以外は……」
「なんだよ、この自信満々って……?」
皆の戸惑いの声が俺に突き刺さるが、悪口耐性とやる気向上のある俺には何の効果も無いようだ。俺は自信満々スキルのお陰で、堂々と適当なことを言い放つ。
「今はまだレベル1だからな。弱く見えるのも当然だろう!」
「そっ……そうですよね! でも、特徴の欄に書かれている言葉……『神聖な転生部屋を消滅させた罪』って? あの……あそこ、私の勤務先兼住居で……」
良いタイミングで豚が驚くほど沢山の食料を抱え、大量のよだれをたらしながら戻ってきたので、皆で食べることにした。
「あのっ!? 神聖な転生部屋を消滅させたって話なんですけど!」
「さて、ここはミドルスコールとかいう場所なのか? ここは地球の何処にあるんだ? まずは警察に行って、このお姉さんを突き出さなければならない訳だが……」
「マスター、おめぇの言うケーサツってのが何なのか知らないけどよ、この家無しビッチは何をしたって反省なんかしねえぜ?」
「けっ、ケーサツ? それって美味しいのでしょうかぁ!?んふ、んふふっ♡」
何故なのか、全員に全く話が通じていない。警察を知らないとか、一体何処でどうやって育てばそのように育てるのだろうか?
「警察は、犯罪を取り締まる組織だよ。今回みたいな誘拐監禁事件なら、おそらくこの誘拐犯罪者のお姉さんは、即刻逮捕され、手続きに従って処罰されるだろう」
「あなた……まだそんな事を言ってるんですか!? 転生したこの異世界で、転生して変わった自分や皆の姿を見て、それでもまだそんな事を!?」
口に突っ込んでいた肉饅頭を飲み込んで、立ち上がる。俺のモンスターボトルから、緊急時の際に警告する振動が伝わってきたからだ。
俺達が座っている路地に設置されたベンチに向かって真っすぐ歩いてくる、妙に田舎くさい雰囲気の、何故か殆ど裸のおじさん。そのおじさんのベルトには、俺の持っている物によく似たボトルがぶら下がっていた。
「ふっふっふ! 田舎者のオラでも、見ればわかる。おめえ、ボトルマスターだべ? オラと勝負だっち!」
田舎の半裸おじさんは問答無用でボトルを開封し、中に指を突っ込んだ。
「発現せよ! オラのモンスター、ジャガリアンハムスター!」
指を引き抜くと、ボトルから溢れ出した虹のような光にキラキラと輝く星のような粒々が被さり、やけに複雑な動きをした後に地面に叩きつけられると、そこにはジャガイモの身体にハムスターの頭と手足が付いたようなモンスターが出現していた。
「ジャガイモォーッ!!!」
鳴き声を上げるジャガリアンハムスター。ハムスター要素が皆無である。身体はジャガイモ程度の大きさで、とても小さい。手にはゴツいひまわりの種を持っていて、戦う気満々のようだ。それにしても、ひまわりの種が武器っぽいのは、どうなのだろうか……?