59 七人の少女と豚一頭、トンタマ最強剣士との闘い
トンタマ市営沼公園という場所で騒ぎが起きているという情報を得た俺達は、現場に急行した。そこに居たのは……見るからにとびっきりの変態おじさんだった。
「ふんふんふんふんっ!!!」
ほぼ全裸だが、両乳首にキラキラ光る宝石が沢山付いた亀のアクセサリーを装着したおじさんの表情は、喜びに満ち溢れている。乳首装飾おじさんは乳首にゴツいピアスを差し込むことで無限の力を得られると信じているが、そんな力は存在しなかった為、非常に弱かったらしい。
乳首装飾おじさんのボトルマスターとしての戦績は負けが続いていて、このままでは自己を失い、女子中学生に変貌する寸前だったようだ。
そんな乳首装飾おじさんが何故か見つけてしまった幻の財宝……両乳首を犠牲にしズブリと装着することで、望む力を何でも一つ得ることが出来るという、何かの間違いでこの世に存在しているとしか思えないチートアイテム。
それを知ってか知らずか、いつもどおりに乳首に装着した乳首装飾おじさんが脳内で密かに望んでいた力の実現が、成立してしまったのだ……。
「すごいお~っ!僕のマラ・ブレードがこんなに強くなるだなんて、夢みたいだほお~んっ!」
乳首装飾おじさんの腰はまるで機械のように自在に動き、驚くほど強靭になった股間の武器を標的に叩きつけ、突き込み、破壊していく。
今、叩き壊していたのはそこら辺に生えていた樹木である。破壊する理由なんて何もないのだが、乳首装飾おじさんは自らの股間の力で次々と木を倒し、誇らしそうにマラ・ブレードと呼称しながらブルンブルンと振り回していた。
そんな乳首装飾おじさんの瞳に、俺が映っている。彼にとっては、怒張した股間の兵器を叩きつけるのにうってつけの相手だとでもいうのだろうか?
「ふんふんふんふんっ!!お前はちんちんだな?正々堂々、僕とちんちんバトルするお~っ!」
顔を赤らめて興奮した乳首装飾おじさんの乳首が3倍くらいに膨れ上がり、上を向き始めた。
「あ~っ!!あ~~~っ!! 出るっ!!出るお~っ!!!」
叫ぶ乳首装飾おじさんが上を向いて大きな声を出す。少しして、キツい臭いが辺りを漂い始めた。おならの臭いだ。
「これは……。変態レベルが一気に上がった感じがするぜ……?」
「くっ、ヤバいでちゅね、まさかこれ程の変態が……!?」
「マスター、このおじさんは危険……だよ。奇妙なのは乳首とちんちんだけじゃない、尻にま……で!」
アオリの指摘の場所をよく見てみると、尻の穴に何かが突き刺さり、短い尻尾のような突起が生えているのが見えた。しかもこの尻尾、尻を動かしてもいないのに……何故か前後左右に動いている!!
「ぶおおおん……おならをしたのにお尻にキャップをしていまぁす……!」
「ねえ、みんな、いますぐ透明化して逃げましょう!?」
「変態ボトルマスターマニアの皆ですらドン引きのこのおじさん……間違いないわね……!」
レム姉さんが、確信を込めた声で感想を述べる。
「このボトルマスターは、恐らくは異常な性知識と度重なる度を越した激しいプレイによって……発狂している!!」
「「「はっ……はっきょう……!?」」」
完全な放送禁止用語を語り始めるレム姉さんに、仲間全員が注目する。女神を自称するレム姉さんにとっては、人間たちの決めた禁止用語なんて関係ないということだろうか?
「ええ、発狂よ。心が壊れて完全に制御不能になって、精神に異常をきたし、暴力や暴言、奇行を繰り返す状態の事をそう言うの。……すると、周囲にいたこれまで優しかった人たちが段々と姿を消していくの!」
発狂の説明を始めるレム姉さん。説明しなくても判るけど、後半は何かキツい話になりそうな感じがしてきたぞ。
「僕たちにも戦わせてくださいにゃ!」
「また3本のマラ・ブレードでボコボコにしてやりましょうにゃ!」
乳首装飾おじさんのボトルから少年っぽい声が聞こえてくる。乳首装飾おじさんが超高速で腰を振りながらボトルキャップを開けると、虹色の光に包まれた男児2名が飛び出してきた。
「おおおっ!!出るっ!!出るーっ!!!」
「僕もっ!!僕も出ますーっ!!!」
先程のおじさんのおならの印象が強く、来るのか!?と身構えてしまうが、実際には男児モンスター2人がよいしょよいしょとボトルから飛び出てきただけだった。
「発現したね!僕のモンスター、ちんちんキャットたち!」
ちんちんキャット……正式名称なのだろうか?誰もこの酷い名前に文句を言う奴が居ないのが気になってしまう。チャーミーあたりが変な反応していないだろうかと顔を覗くと、何処か遠くにある幻の食品を見つめて食欲を高めている最中らしく、その剥き出しの表情に俺は心底恐怖してしまった。
「力を与えよう……さあ、その股間のブレードを立てて、戦ってみせてくれっ!マーラッ!!!」
「ああっ!立つ!立ちますにゃああっ!!マーラあッ!!!」
「僕もっ!!限界を超えて立ち上がりますにゃああっ!!マーラああッ!!!」
男児2名の衣服が燃え上がり、全裸に変化する。これは……もしや伝説の〇ードフェンシングが始まってしまうのではないだろうか……?
「うわーっ?これは色々とアウトなんじゃないですかーっ?」
「はぁっ、はぁっ、6号様っ♡♡♡6号様ぁっ♡♡♡」
空気を全く読まないフィレの6号足舐め責めが続く中、名前だけではなく、完全にアウトすぎて容姿を伝えることが難しい男児猫型獣人モンスターは、全身にラメ入りマジックで書かれたらしき淫猥な落書きをキラキラ輝かせながら、小さなマラ・ブレードを振り上げて、俺に襲い掛かろうとしていた。
「マーラ!マーラ!一撃必殺!お覚悟にゃ~っ!!」
「マーラ!マーラ!マラ・ブレード斬り・一の太刀にゃ~っ!!」
卑猥すぎる格好の男児たちがジャンプしつつ大股を広げて股間で切りかかってこようとしたが、後ろからファフニルに素早く陰嚢を握り潰されてしまった。
何事が起きてしまったのか分からず、自分の股間を見つめる二人。事態を飲み込み、遅れて脳に伝わってきた激痛を味わっているのか真っ青な顔になり、泡を吹いて気絶する男児2名。敗北した乳首装飾おじさんのボトルは粉砕されてしまう。粉々になったボトルが細かな光の粒子になって、おじさんを包囲していく……!
「嘘だおっ!?僕のマラ・ブレード強化が、こんな……あ、あ、ああああ~ん!!!」
光に包まれたおじさんは、一瞬でとびっきりの女子中学生に変貌し、周囲をキョロキョロと見渡している。
「あれっ、ここ、何処なの?私は誰なのぉ!?」
「なるほどなあ、チート装備で竿を最強の武器にしていても、玉は最大の弱点のまんまって事か。そんな対処方法、良く思いついたべ~……」
俺はこっそりと乳首装飾おじさんが落とした亀の乳首ピアスを拾い上げて、公園の沼に投げ捨てた。もう二度とボトルマスターの変態に見つかりませんように……と祈りながら。




