57 七人の少女と豚一頭、トンタマで躾けられる
とりあえず、まずは形から入ってみよう!という話になった。何しろ、誰も具体的な女王様像を知らないのだ。
見た目は子供で中身は大人の集団なのだが、アブノーマルな性知識は子供と大して変わらない。
ホテルに戻った俺達は、寝る前に荷物袋に入っているあれやこれやを掘り出し、その場で組み合わせたり縫い合わせたりして、想像上の女王様と下僕豚のコスチュームを作り出してみた。
女王様コスチュームの一番の見どころはスーパーハイレグカットだ。おいおい嘘だろう!?と感じてしまい、実在を信じられない脚刳りが装備者の下半身に発生してしまう。誰もが見た瞬間に、そんな股で大丈夫なの!?自暴自棄になってるんじゃないの!?と思ってしまうであろう危うさだ。
「ねえ、キリコ……そのスーパーハイレグカットって、大胆すぎるけど……大丈夫なの?中に隠してる大切なアレが出ちゃうんじゃないの?」
「はがくれ流隠蔽術によれば、大丈夫な筈です!多分ですけど……大丈夫!!だと思うんですけど……」
手に持つ女王様の標準装備であろう鞭は良さげな物が無かったので、代わりに蠅叩きを用意した。これで下僕の尻をパーン!と叩くのだ。叩かれた下僕は喜びの声を立てるらしいのだが……。
一方、下僕豚用には下僕首輪だ。魔力の込められた石が付いていて、動くとピカピカ光るやつだ。夜の公園とかで時折見かけたやつと同じようなものにした。リードは短くしっかりとした素材の物を使いたかったのだが、材料が無かったので、目についた適当な縄である。
「よし、とりあえず完成だな。さて、問題は6号がこの恥ずかしい装備を着るかどうかだが……」
「な、なんと!?これを着ろというのですか!?私、これを着て生活するんですか!?」
あれこれ文句を言いながらも何故かしっかりと女王服を着込み、ポーズをキメたりしてまんざらでもない顔をしている6号。もしかしたら吸血鬼の血が騒ぐのかもしれない。一般的な吸血鬼がそういう恰好をしているのかどうかは知らないけど。
「ぶおおおおおん♡ 飼い豚ですっ♡ 飼い豚ですううっ♡♡♡」
「命令します!このめす豚め!自分用の布団で一人で寂しく寝なさい!放置プレイですからね!」
命令に喜んで大股を広げながら布団に寝転がる首輪をハメたフィレを、何故か同種同族の豚人間チャーミーが羨ましそうな顔をして見つめている……。
「あのぉ……マスター、あの凄くハメ心地が良さそうな首輪を見ているとですね、何故だか、凄ぉく羨ましく、同じものが欲しくなってしまうんでぇす……!」
「チャーミー、それは勘違いだ。気の迷いってやつだよ。俺の経験上、間違いないぞ!」
「え~っ!?そうだったんですか!?ぶおおおお~ん!良かったです!私、首輪をハメて支配されたいド変態になっちゃったんじゃないかって心配だったんでぇす!!」
チャーミーが胸をなでおろし心底安心した表情で微笑むが、だいぶ前から俺はチャーミーは相当深刻なド変態なんじゃないかと思っていたので、反応に困ってしまい、余っていた首輪の素材で腕輪を作ってハメてやった。
「えっ、マスター……ぶおっ??こ、これっ……この付け心地……ぶおっ……ぶおおおっ……!」
「良い付け心地だろう。俺の経験上、間違いないはずだ!」
腕輪に興奮し顔を紅潮させ全身から汗水を発して喜び始めたチャーミーを見て、ドタバタと地団太を踏み始めるファフニル。
「ず、ず、ずるい!ずるいずるいぞ!俺にも!俺にもなんか、ちょうだい~っ!!」
「とは言っても、ベルトの素材はもう無いし、うーん」
荷物袋の中を漁ると、重量を無視できる上に中身は傷まず腐らず大量に何でも入る袋なので、色々な物を好き勝手にぶち込んでいたツケが回ってきている事を感じてしまう。
何故これを俺は入れたのだろうか?という数々の物品の奥底から、それは出てきた。
「ああ、これでいいかな?」
ミドルスコールの雑貨屋の奥で偶然見つけ、燃える紋様を何故か気に入って、大金を支払って買ったのだが、しまい込んだまますっかり忘れていた冠を荷物袋から取り出し、ファフニルの頭に乗せてみる。
「えっ……これを俺に……?」
冠を手に取って、嬉しそうなのだが、何処か見た事の無い奇妙な表情で冠の表面を見つめているファフニル。
「ファフニルに似合うかもと思って買っておいた物なんだが、何か問題でもあったか?」
「……ううん、何でもない。有難く頂くぜ!ははっ!」
だが、その後のファフニルは、冠を常に身に付けてはいるものの、決して頭に乗せようとはしなかった。理由を聞きたい気持ちはあったのだが、その度にあの表情を思い出し、なんとなく聞けずにいる。
ともあれ、そんなこんなで、俺の仲間に女王様と下僕が誕生してしまった。
「命令します!今後、めす豚は二本足で立って歩きなさい!私との距離は1m離れて!許可なく足に吸い付かない!」
逆立ちして、ぱんつを剥き出しにしながら1mの距離を保ち続けるフィレ。口からはよだれを垂れ流し、6号の足をじっと見つめている。逆立ちのせいで、しっぽをぶんぶんと振っているのがよく見える。
「ちょっ……なんか……違っ……」
「にっ……♡ 二本足いいっ……♡♡ 6号様の為なら、どんな困難にも耐えて見せますうううっ♡♡♡」




