04 五人の少女のご奉仕するにゃん
「うわっ? 何か、変な所から声が聞こえるぞ!?」
「ぶお~んっ! わたしじゃありませぇん! ご、5号さんが悪戯してるんじゃないでしょうか?」
「ちっ! 違います! 私は今、殿方の視線が恥ずかしくて! 透明化しています……!」
(我らが声は、お主の脳内に直接発生している。故に、他者には聞こえぬ)
とりあえず俺は不気味な謎の声を完全無視することにした。
何故なのか理由は全くわからないのだが、今の俺の体には力と自信、更には根性や知性などが溢れている気がする。今ならば何をしても無敵であるという気持ちが、そうさせたのかもしれない。
今ならば、何だって出来る。そう、この悲惨な少女監禁事件を解決する事だって。
「良くわからないが、とにかく警察に行こう! 警察に行けば全て解決する筈だ! 5人まとめて、俺についてきてくれ! 契約しなければ動けないというのならば、契約しようじゃないか!」
「何だ? クルクルパーになるボタンだったのか? まぁ、契約するのは願ったりかなったりだけどよ、ちゃんと規定の対価は貰うぞ?」
親指と人差し指で円形を作り出して、お賃金の事を主張しだす1号。
「対価とは……何だ?」
「ビッチどもの作った規定に従って、マスターの年収の1割が俺の物になる。仮に5人契約するなら半分が俺達の物になるんだ」
「それ、大儲けしてる奴の下に付いたら、結構な儲けになっちゃうんじゃないの?」
契約方法は簡単で、モンスターボトルに指を突っ込み、マスターの決めた契約の言葉を大声で叫んでもらう事で、それぞれに合った契約の証が現れるらしいのだが、彼女たちも契約をしたことがないので詳細は知らないらしい。
いや、しかしだ、契約の言葉って言われても、特に思いつく言葉は無かった。
「よし決めた。契約の言葉は『ご奉仕するにゃん』に決まりだな」
「簡単でいいじゃねえか、契約するぞ~!」
自信に満ち溢れた俺が決めたのは昔のアニメの決め台詞なのだが、5人は特に躊躇などすることなく契約を交わしてくれた。この有名懐かしアニメネタが全く通用しないとは……。
「ご奉仕するにゃん!」
「ご奉仕するにゃん」
「ご奉仕するにゃ……ん」
「ごっ、ご、ご奉仕するにゃんっ! ぐふ、ぐふふ、ぐふふふふっ!」
「は、はわわ……ご奉仕するにゃん~っ!!」
順番に5人が突っ込んだ指が光り輝く。それが収まった時には、全員の指にやけに下品な蛍光色の指輪が装着されていた。完全に児童向けの玩具だが、5人は別に気にしていないようだ。
「んじゃ、次はこっちの赤いボタンを押してみるか、ほいほいほいっ……と」
「あっ、また相談もなく……」
1号が赤いボタンを連打し始めると、突然俺達の周囲の光景が崩れ落ち、身体が宙に浮いているような感覚の後、ほんわかと良い匂いが漂う空間に投げ出され、全身に超高速の指圧マッサージを受けているかのような奇妙な感覚を覚えた後に、突然見た事も無い街中に全員で立っていた。
正確には、一人は地面に倒れている。犯罪者のお姉さんだ……。