36 七人の少女とレッツ・ダンシングまつり
ステータス確認で全員の現在の状態が確認できた。モンスターポイントが全員に黒星を最大値の20個配っても余裕で余る点数溜まっていたので、全員に配分する。
「すげえな……いきなり★20個配分とか、聞いたこともねえぞ。なんか、腹の底から滅茶苦茶力が湧いてくる!」
「ていうか、みんな……レベル上がりすぎじゃないでちゅか? これって負ける要素が無いんじゃ?」
「レッツ・ダンシン……グ! 覚えたいと思っていたけど、覚えて……る!」
「ぶおおお!? 雌豚の力が13万8千!? つ、つ、強すぎまぁす!?」
「たしか、言い伝えに残ってる伝説の勇者の力が3万くらいだった筈ですよ……これってもう、4号さんが突撃して回るだけでいいんじゃ……?」
「わっ、私、マスターの血を飲みたいだなんて……そ、そんな事っ……!」
「ねえっ? 私、卑劣な事なんて何もしてないわよね!? 何なの!? 卑劣無能女神って!! この失礼な中傷文章は何処の誰が作ってるの!? あああっ!! ふんああああああ!!!!」
仲間達は好き勝手な事を言っているので、とりあえず作戦を立てる。俺の目論見というか5号の言う通りで、4号をひたすらモンスターボトルめがけて突撃させれば全て解決する気が若干するのだが、力だけで解決できない事もあるかもしれない。
「みんなっ! いっしょに踊ろっ!」
「「「レッツ・ダンシングでぇす!!」」」
突然聞こえてきた声に驚くボトルマスターおじさん達。
「何だっ? 今の声は!?」
「こっ……攻撃か!?」
ズン!ズン!ズンドコ!! ズン!ズン!ズンドコ!!
踊れっ!! 踊れっ!! ぴゅうぴゅうぴゅ~う!!
何処からともなく聞こえてくる謎の音楽と女の声に合わせて、何故かボトルマスターおじさん達の身体が勝手に踊り出してしまう。ボトルマスターおじさん達だけではなく、女子中学生達や、学校で飼っているウサギや鶏に至るまで、全ての生き物が狂ったように踊り出してしまった。
ズン!ズン!ズンドコ!! ズン!ズン!ズンドコ!!
じゃんぷっ!! じゃんぷっ!! ぶおおおおお~ん!!!!
「な、なんなのこれっ!? 気持ち悪いおじさん達の次は、いったい何なのぉっ!? ひいいいんっ!!」
「くそっ!? これは厄介な『レッツ・ダンシング』だ!! こんなのを使える奴は、ボトルマスターでもないくせに、うさ耳の痴女モンスターを連れた、あの変態男しか居なかった筈なのにいいい!!」
5号の透明化の効果が切れると、3名が全く別種類の動きをしているのが目に入ってくる。全員の狂ったような踊りは止まらない。
おそらくあのスキルは踊り手の踊りを再現するように出来ている筈だ。あんなにバラバラの動きをされていたら、再現する方は3種の動きを同時にせねばならない訳で……。
ズン!ズン!ズンドコ!! ズン!ズン!ズンドコ!!
おへそっ!! おへそっ!! はっ、はっ、恥ずかしいい!!
作戦では、皆が踊り狂う中から女子中学生達だけを助け出し、最後は炎と電撃でキメる予定だったのだが、あの3人はレッツ・ダンシングというスキルの楽しさに夢中になっているようだ。
「ふふん……低レベルなダンスだぴょん。呼ばれて、飛び出て、ぴょぴょぴょぴょ~んだぴょん!!!!」
その場に突然現れた、バニーガール衣装に身を包み、ふかふかのマフラーを巻いた、上半身だけセーラー服の女。背後には富裕層御用達の犬までいる。
「あああっ!? あの子、ダンシング・バニーですよ!? 倒したはずなのに、どうして!?」
「上だけ中学生のセーラー服を着てるな……混じってたんじゃないのか?女子中学生の群れに」
「ダンシング・バニーの仮死隠密スキルと吾輩の変装スキルに、すっかり騙されたようであるな!」
皆が狂ったように踊り続ける中、一人だけ仁王立ちをしている女子中学生の姿。最初にボトルマスターおじさんに胸を揉まれていたとびっきりの女子中学生だ。ま、まさか……?
女子中学生はその場でスケートダンサーのようにくるくると回転する。すると、なんと……女子中学生の姿がいつのまにかおじさんの姿に……。なんということだ……。さっきまで女子中学生だったのに……!! こんな残酷な場面に出くわすだなんて、信じられない……!!
おじさんの服は前面しか無く、後ろ半分は素っ裸。回転の勢いで揺れる陰嚢のような袋が見える。この特徴的な貧○ちゃまスタイルは、間違いなくあのおじさんだ。
「玉出しおじさんじゃないか! 生きていたのかぁ……!」
「いくら何でもひどい呼び名である。この格好にも理由があるのだが……」
バニーさんは、腰についた怪しげな器具で音楽を流し始めた。首、胸、おしりの順番に体をふりふりし、何やらリズムを取った後、その場でリズミカルでちょっと変なダンスを踊りはじめる。
「みんなーっ! いっしょに倒れるまで踊ろっ! レッツ・ダンシングだぴょ~ん!」
ズン!ズン!ズンドコ!! ズン!ズン!ズンドコ!!
踊れっ!! 踊れっ!! ぴょ~んぴょんぴょ~ん!!
ダンシング・バニーの強烈な踊りとダンスに、3人のバラバラダンスは効力を失い、その場に居る全員がしっかり揃ったダンスを踊り始める。レッツダンシングのレベルが低い3人が踊ったダンスは、所詮、彼女の模倣でしかない……。それがとても良くわかる光景だった。
「くっ……か、勝てない……ダンスの経験値が違いすぎる……よ」
「ぶひょおおおっ!? すごく、おいしそうなウサギさんでぇす……!!」
「変態おじさん怖いっ……!! 変態おじさん怖いっ……!!」
スキルの効果範囲も広いようで、離れたところから見ていた俺達の身体もダンスをはじめてしまう。レベルが上がったせいなのか、抵抗すれば踊らずに済むようだが、やはり恐ろしいスキルだ……。
「変装や仮死を使ってまで生き残り、このタイミングで俺達の前に姿を現した理由は何だ!?」
「ふむ、理由であるか……? 吾輩はダンシング・バニーと仲良く楽しく暮らしたいだけである。変装していたタイミングで中学校が出来て、丁度良かったので寮から二人で通学していたのだが、今回の事件が起こってしまった。あとは、成り行きであるな」
よく見ると、おじさんの腰にはモンスターボトルが付いていない。
「おじさん、もしかして、ボトルマスターじゃ無いんじゃ?」
「バレてしまったか。吾輩とダンシング・バニーは共に旅をする普通の友達である。ボトルマスターを見つけたらレッツ・ダンシングで苦しめて、タイミングを見計らって金品を巻き上げて旅費にしていたのだ」
「えっ、それじゃ、俺達って戦う理由とか無いんじゃ……?」
「ぴょおおん! ぴょおおん! さあ、みんな! ダンスをやめたかったら、お金! 宝石! なんでも買えるマネーをどしどし出すんだぴょおおおお~ん!」
体が自由に動く3名が、両手をお金の形にしたダンスを踊るバニーさん達の中から女子中学生だけを撤去し、1号と2号から放たれた火炎放射と稲妻でモンスターやボトルを粉砕されて、その場に居た全てのボトルマスター達が女子中学生に変貌していく。
「あれっ…… ここって何処? 私達、何処の誰なのぉ…?」
バニーさんや変なおじさんはそもそもこの程度の攻撃では死なないくらいレベルの高い冒険者らしく、平気な顔で地面に散らばり落ちているボトルマスターおじさん達の遺産を拾い集めている…。
「ハハハ、これでまた、お主の好きな贅沢暮らしが出来るな!」
「無駄口叩いてないで、どんどん拾お! ぴょん、ぴょん、ぴょ~ん!!」
はちゃめちゃな踊りを延々と踊らされた女子中学生達を皆で介抱しながら、俺は思った。
本当にこれで、ボトルマスター退治は終わったのだろうか……?
次の瞬間。俺達の身体を、突然出現した光の渦が包み込んでいく…。




