30 六人の少女と女子中学校舎の誕生
その日……。
世界をあても無く彷徨い歩いていた、とびっきりの女子中学生達のお友達ネットワークに、希望に満ちた情報が流れた。
その情報を聞いた女子中学生達は手荷物をまとめ、続々と一箇所に集まってきている。そう、先日の廃墟学校である。
校舎内には学校用品が一通り揃ったままになっており、まるでつい昨日まで学校生活が送られていたかのような状況だ。しかし、埃が積もり、数十年間放置された校舎は汚れに満ちていた。
しかし、廃墟に集まってくる女子中学生達は、皆、同じ制服を着て、希望に満ちた目をしている。元気に校舎や校庭、体育館の掃除を始める彼女たち。大きな寮もあるようで、野宿をしていた女子中学生達が泣いて喜んでいる。
校庭に集合した女子中学生達に向かって、代表らしき女子中学生が、マイクを使って声を上げた。
「みんな、忘れないで! 居なくなった子達の事、死んでいった子達の事! あの子達の分も、私達はこの学校で、中学生ライフを! 精一杯、送りましょう!」
わああああっ!!! と校庭で盛り上がる女子中学生達、総勢160名。俺が関わってこの世に産まれた女子中学生だけではなく、余所で産まれた女子中学生達も多数混じっているようだ。
今の話っぷりからすると、行方不明者や死人も出ているのか。国家的洗脳の場はやはり厳しい環境のようだ。俺達だって、いつどのような目に合わされるのかわかったものではない。背筋を突き抜ける寒気を各種耐性で堪えながら、俺は女子中学生達に拍手を送った。
(汝、遂に女子中学生の砦を作り上げたな……! 汝の贖罪はじきに完了するであろう! 汝のモンスター達の罪が許される約束の時も近いぞ? ……汝、聞こえてるのだろう? 我ら、気付いているんだからね!)
相変わらず脳内に流れてくる謎声の言っている事が正しければだが、そのうち俺の罪とやらが許されるらしい。許されたからどうなるのかは知らないが。
俺のモンスター少女たちも許される日が近いらしい。そもそも彼女たちが一体どんな罪を犯したのか詳しいことは何も知らないし、不自由をさせているつもりは全く無いのだが、自由になれるのならばそれが一番良いだろう。第一、いつまでも数字で呼ぶのは可哀想だ。名乗ることも許されないだなんて、残酷すぎる。
そんな事を考えていると、当人達が寄ってきた。7人も居るとちょっとしたハーレム状態だと思うのだが、残念なことに全員が女児だし、俺も声変わり前の男児である。
「な、なあ、マスター。今日も大浴場行かないか? なんか足の裏がベトベトしてるんだ」
「ああ、噂の設備でちゅね? あたちもいきまちゅ! なんか足の裏がベトベトしてまちゅ」
「大きな湯船で、イカダンスする……ね」
「ふああっ!? マスターや皆さんとご一緒にお風呂だなんて、ぐふっ、ぐふふぅ……? メス豚は、メス豚は我慢出来るのでしょうか……!?」
「あっ……私も……良いでしょうか? 恥ずかしいですけど、がんばります!」
「こないだ入ったけど、温泉卵があるって後で知ったんですよね。またご一緒させてください!」
「私は無能じゃない! 私は無能じゃないのよ! 行くわよ~大浴場!」
じゃあ大浴場で身体を綺麗にしてから食事にしようか、という話に落ち着いて、女子中学生達に軽く挨拶してからホテルに戻ることになった。
「重ね重ね、ありがとうございます。皆様の助けが私達の命に繋がりました。この御礼は、いずれ、必ず…!」
とびっきりの女子中学生達に深々とお辞儀されて悪い気はしないのだが、この子達の正体は変態ボトルマスターおじさんである。
転生や変身なんていうものが実際には存在しない事を考慮すると、俺が薬物か何かの力で延々と見せられているこの素晴らしい女子中学生達の光景は仕掛け人の気まぐれで、何かの拍子に突然おじさん達の巣窟に戻ってしまうのかもしれないのだ。
俺は心底の恐怖を感じそうになったが、今回も便利な各種耐性が役に立ってくれたようだ。顔色一つ変えずに、俺は女子中学生達に笑顔を見せる。
「また何か手伝えることがあったら言ってくれ。それじゃあな」




