03 五人の少女との対話
檻に繋がれていた縄を無理矢理外したのだろうか? 1号の腕の傷からは、血が滴っている。
しかし、彼女の顔からは先程までの絶望の色は消え失せ、瞳に希望の輝きを満たし、見ている俺からしても心地の良い満面の笑みを浮かべていた。
「ガハハハッ!! このガリ勉ビッチ!! 死ねっ! 死ねっ!」
嬉しそうに、お姉さんの腹を何度も何度もキックし続ける1号。
「ちょっ……! 誘拐された恨みがあるのかもしれないけど、そんなにしたら死んじゃうよ!?」
「ハァ? こいつらはそこの6次元空間からエネルギー供給されてすぐ復活するし、何したっていいんだよ。それよりおめえ、ちょっとそのモンスターボトル……俺に渡してくれない?」
「その脳筋に渡ちたら、マスター属性が破棄されて、即座に殺されるでち」
いつのまにか近くまで来ていた2号が主張し、1号と睨み合いになる。
「ハ、ハハッ……! 何言ってんだ? そんなことしねえよ……?」
「それは良かったでち。マスター。そのボトルは手放さずに、大事に持っていてね?」
お姉さんの身体に墨でナッツや赤貝等のどうしようもない落書きをはじめた3号が、俺の方を見たりはせずに口を開いた。
「マスターが居れば、ミドルスコールに戻る道が開ける……筈。今はまだ、マスターにはマスターを続けてもらわなければ、困……る」
4号は相変わらず頬を赤らめて身をよじりながら俺の身体を美味しそうな食料を見る目で見つめてよだれを垂らしており、5号は透明化したのか何処に居るのかわからなかった。
「……えっと、確認しておきたいのだけど、俺はあなたたちの言うマスターとかではなくて、アラフォー社畜で、アニメとパソコンくらいしか趣味がない独身マスターおじさんなんだけど」
「俺、頭悪いから、おめえが何を言ってるのかさっぱりわかんねえんだけどよ、その『モンスターボトル』……それがマスターの証だから。自分の意志でそのボトルを誰かに手渡さなければ、俺達は基本おめえの命令に逆らえねえし、契約すれば忠実な手駒になるの。当然、そこらへんは解ってるよね?」
ううん? 全然知らない。
「……まさか、知らないの? これ、ボトルマスターの基本だよ?」
繰り返しになるが全然知らない。犯罪者のお姉さんは気絶しているので、とりあえず彼女が最初に居た場所の辺りを探してみると、二つのボタンを発見した。
妙な装飾のついた、赤色と青色に光る押しボタン。
「これを押すと、どうなるんだ?」
「食い物でも出てくるんじゃねえの? ほいほいほいっ……と!」
何の躊躇もなく青色のボタンを高速で連打する1号。暫くするとボタンの光は消え、押せなくなってしまったらしい。
「ちょっと1号! そういう事は相談の上で……」
次の瞬間、俺の身体にものすごい量の何かが流れ込んでくるのを感じた。ものすごく熱いような、やけに冷たいような、ドロドロとした正体不明の何かが俺の身体に沁み込んで、完全に一体化してくる。能力の使い方。モンスターボトルの使い方。その他諸々の豆知識。不快感は無いが、いきなりの事なのでびっくりしていると、突然頭の中に声が響き渡った。
(我らは、汝と共に覇道を征く者として、汝の身体に溶け込んだ……過去に存在した数多くの『力』である……)




