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もんもんモンスター  作者: 猪八豚
大怪物少女
21/150

21 五人の少女と、ぶおおおおおおお~んっ!!!

「突然街に現れた新規のボトルマスターが、5匹の女児型モンスターを引き連れて、あちこちで無双しているらしい……」

「おいおい、5匹って……正気なのか? 年収の半分がモンスターの腹に消えちまうぞ?」


 脇毛の長いおじさんが酒を煽りながら呟き、鼻毛の長いおじさんが干し肉を転がしながら反応した。


「くっくっく、恐れることはない。我ら『長毛同盟』全員の力を合わせれば、モンスターの数でも、戦闘力でも、必ず勝るはずだ」


 胸毛の長いおじさんが、酒を飲みながら胸を張って呟く。


「それに、この潰れた酒場にいれば、見つかることもないだろうさ」

「ああ、俺達の戦略に間違いはない」


 街を出て暫く西に進むとポツンと立っている廃墟のような酒場にいるおじさん達の体毛は、何処かが妙に長く成長し、外部に飛び出している。彼らは『長毛同盟』を名乗り、ボトルマスターとの戦いを極力避け、戦いになってしまった場合は同盟の全員でボコボコに叩き潰すことで、とびっきりの女子中学生と化す事を避けてきたのだ。


「えっ、でも……! 俺…………!」


 耳毛の長いおじさんが、挙動不審になる。


「酔った勢いで……! 新人をシメてやろうと思って……! 便箋が余ってたから、馬鹿にする手紙を書いて、ここの場所も書いて、送っちゃったんだ……!」

「何だって!?」

「アホかお前!」

「なるべくなら、戦いを避けたいのに……!」


 ドンドン! ドアが叩かれる。普段なら誰一人として来客しないこの潰れた酒場に客人が来るだなんて、もう例の新人だとしか思えない……! 長毛同盟の全員に緊張が走るが、ドアを開けて入ってきたのは小柄なモンスター少女……4号だった。


「すいませぇん、ここからお手紙が届いたんですけどぉ、おいしそうで、わ、わたし、我慢できなくて、ついうっかり中身を食べちゃったんでぇす! 封筒だけは我慢できたんですけどぉ……」

「くっ……! 情報屋の言っていた、新人マスター野郎の女児モンスターだ! お前ら全員、モンスターを発現させろ!」


 次々と姿を現す長毛同盟のモンスター達が、叫び声を上げて4号に襲い掛かっていく。


「えっ!? えっ!? どの子もめちゃくちゃ美味しそうで、もう我慢できないんですけど、良いんですかぁ!? ぶ、ぶ、ぶおおおおお~~ん!! ありがとうございまぁ~~す!!」


 4号がポケットから出した謎の玉を投げると発生した恐ろしい勢いの業火が、情け容赦無くモンスター達に襲いかかる。


「ウッ…… ウメェェェッ!!!」

「トリトリィィィッ!!!」

「マーラ! マーラー!!!」

「タケ、タケ、タケ……!!!」

「ウキ! ウキィー!!!」

「我の知能は人類を超えェェ……!!!」


 最後の叫びを上げて、あっという間にこんがり焼き上がり、4号の口蓋内に次々と消えていくモンスター達!


 マッスルウメボシ、トリチキン、デカマラガメ、ショッキングたけのこ、サルモンキー、頭脳昆布……! どんな奴らも一瞬で噛み砕かれて、4号の腹に収まっていく!


「ぶおおおおお~~んっ!! 最高でぇす!! おいひいいいい~~~ん!!」


 長毛同盟のおじさん達は次々とモンスターボトルが割れて、変化の光に包まれていった。


「「「「「「 ああっ、あああっ、あああああ~ん!!! 」」」」」」


 長毛同盟は数分で壊滅した。後に残ったのはとびっきりの女子中学生の集団。セーラー服に身を包んで、清楚な空気を漂わせている。


「あれっ…… ここは何処? 私達、誰なの……?」

「あのぉ、ぺちゃ、ぺちゃ、この手紙…… 何が書いてあったか…… ぺちゃ! ぺちゃ! 知りませんかぁ?」


 モンスターの足の骨をしゃぶりながら封筒を見せて話しかける4号の異常な勢いに怯えて酒場から逃げ出す女子中学生達。彼女たちの甘酸っぱい青春ラブストーリーはきっとここから始まるのだろう。


 ひょいとドアから顔を出す1号。後ろからは残りの全員が歩いてくる。


「おい4号、なんか女子中学生達が街の方に逃げていったけど……ああ、防犯用に渡しといた焔玉、使ったのか。便利だったろ?」

「ありがとうございまぁす!!! めちゃくちゃ、美味しくなりましたああっ!!!」

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